珠洲のホテル 待望の開業 地震で5カ月遅れ 7月に

海と田んぼが一望できる客室=珠洲市上戸町南方

  ●「のとのわ」将来の観光復活願う

 珠洲市上戸町南方で7月1日、ホテル「のとのわ」が開業する。今年2月にオープンする予定だったが、能登半島地震で壁や天井が崩れたり、資材調達が遅れたりして5カ月遅れのスタートとなった。ホテル名には宿泊客と住民が交流し、「能登の輪」を広げる場になるようにとの願いが込められており、復旧事業者に宿泊場所を提供するとともに、将来の観光復活、にぎわいの創出につなげる。

 のとのわは約20年間使われていなかった「モーテル能登路」を改装した2階建てのホテルで、客室は7室。宿泊客以外も利用できるレストランやテラス席、土産物の自動販売機などを設けた。所有者が3年ほど前に事業計画を練り始め、昨年8月に着工した。

 8割ほど工事を終えたところ、元日に地震が発生。壁や天井が崩れ落ち、道路寸断で資材や工事業者が入れなくなった。ゼネラルマネジャーの蔵雅博さん(64)=珠洲市=は「どうしようか悩んだが、建物の壊滅的な被害は免れた。やれ、ということだったんでしょう」と再開を決めた心境を語った。

 道路復旧に伴って工事も再開し、客室が整ったことから今月9日にプレオープンした。宿泊場所不足が課題となっている復旧事業者らに宿を提供し、サービス向上へ意見をもらった。

 のとのわの宿泊プランは税込み5千円の素泊まりのみ。チェックインは顧客自らがタブレット端末で行う「スマートホテル」の形態とした。少子高齢化で労働人口が少ない能登地区で新しいホテルのあり方を探る。

 内装デザインやロゴは金沢美大の学生らが手掛けた。いずれも卒業して県外に就職しており、今後、のとのわに宿泊客として招待する。蔵さんは「地震で関係人口の重要性がより高まった。人の輪を広げるホテルにしていきたい」と話した。

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