【岩本輝雄】レッズ武田英寿はなぜ最後にFKを決められたのか。アイデアと技術が凝縮された素晴らしい一発だった!

[J1第19節]浦和 2-2 鹿島/6月22日/埼玉スタジアム2002

1人でチームを救ったね。レッズの武田英寿。見事な活躍ぶりだった。

ホームでアントラーズに2点を先行される展開。ベンチスタートの武田は76分に途中出場。その1分後だ。右サイドからのマイナス気味のクロスにダイレクトで合わせる。正確なシュートを流し込んだ。

そして圧巻だったのは、終了間際のフリーキック弾。敵陣左サイド、ペナルティエリアから少し離れた位置でのフリーキック。普通ならゴール前に入れてもいい距離だ。

でも、相手のゴールキーパーはけっこう前に出ていた。僕も現役時代はセットプレーのキッカーだったから、こういうシチュエーションではまずゴールキーパーの立ち位置を確認する。これ、裏をかいて狙ってもいいよね、狙ったら面白いなって、見ていた。

僕の考えが伝わったかな(笑)。武田は直接狙った。ゴールの左。鋭い弾道で。

目の前に壁が1枚。それを越すようなキックでは、ゴールキーパーに時間を与えてしまう。だから速いボールを意識したはず。何よりも、さすがだなと思ったのは、ゴールラインの手前でワンバウンドさせたこと。あれでボールのスピードがグッと速くなる。ゴールキーパーも懸命にセービングしたけど、ほんのちょっとの差で届かなかった。

【動画】武田英寿が途中出場で即ゴール、そして超絶FK弾!!
武田は前節にもアシストを決めている。そしてこのアントラーズ戦でも途中出場してすぐに得点。良い意味で“イケイケ”だったと思う。やってやるぞって。あのフリーキックのゴールには、そんな勢いが感じられた。もちろん、彼のアイデアと技術が詰め込まれた、素晴らしい一発だった。

武田とはシーズン前のキャンプ取材で一度、会っているんだよね。その時に、意外な事実を知らされた。彼は仙台出身で、子どもの頃に僕のスクールに来てくれたことがあって、一緒にボールを蹴ったことがある。

そんな縁もあるし、青森山田時代からも知っているし、水戸からレンタルバックした今年は特に気になる存在だった。なかなか出番がなかったけど、ここ最近は良い感じだよね。アントラーズ戦の2得点で評価もさらに高まったはず。今後の活躍を期待しているよ!

【著者プロフィール】
岩本輝雄(いわもと・てるお)/1972年5月2日、52歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ/平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた“40メートルFK弾”は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説者や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを研究する日々を過ごす。23年に『左利きの会』を発足。

© 日本スポーツ企画出版社