中津市出身の作家・松下竜一さん没後20年 記録映画製作や読書会、精神は今も色あせず【大分県】

松下さんの追悼読書会で著作について語り合う参加者=大阪府の隆祥館書店
松下さんと行動を共にした市民運動の記録映画について語る草の根会・中津代表の梶原得三郎さん=中津市片端町

 【中津】ノンフィクション作家で環境問題や平和などの市民運動に取り組んだ中津市出身の松下竜一さん(1937~2004年)が今月、没後20年を迎えた。死去後も出版物などを通じて多くの人の思想や行動に影響を与え続け、身を投じた市民運動に着目した記録映画製作が進むほか、新旧ファンによる読書会もスタート。「信念の人」の精神は今も色あせていない。

 命日の17日夜、大阪府の隆祥館書店で追悼の読書会が開かれた。呼びかけ人の二村知子社長は6年前から松下作品のファン。「没後20年の節目に共感し合える場を」と初めて企画した。

 元教員、会社員、医師、看護師、作家ら50~70代の13人が参加。日の浅いファンから全集を読破したベテランまでさまざまで、東京や大分などの遠隔者とはオンラインで結んだ。

 取り上げた著作は「狼煙(のろし)を見よ~東アジア反日武装戦線“狼(おおかみ)”部隊」。登場人物や時代背景に思いを巡らせ、意見交換。最後に「竜一忌」と題して来年も読書会を開くことを確認した。

 二村社長は「権力と闘い、弱者や逆境の人に寄り添い、おかしいことはおかしいと体を張った。今だからこそ松下竜一」と話す。

 映画は、豊前火力発電所建設などの反対運動で松下さんと行動を共にし、今も市民運動に取り組む梶原得三郎さん(86)=「草の根の会・中津」代表、同市片端町=らを追った「優しき人たちの闘い~市民運動の原点を見つめる」。

 ドキュメンタリー番組などの制作に携わってきたディレクターの宮村浩高さん(63)=大阪府=が15年前から中津に通い続け、撮りためた成果で完成後の8月9日、「平和の鐘まつり」(同市)で披露される。「普通の感覚を大事にした市民運動。若い人にも見てもらいたい」と宮村さん。

 同まつりは1986年に松下さんの発案で始まり、反戦、反核、反原発をテーマに講演や映画上映などをしてきた。中心メンバーの梶原さんは「まつりは松下さんの遺産のような取り組み。参加した人が生き方や考え方を振り返る場にできたら」と話した。

© 有限会社大分合同新聞社