あなたは分かる?今さら聞けない「いきなり団子」名前の由来

突然ですが、熊本県の郷土料理「いきなり団子」の名前の由来知っていますか?

熊本市の繁華街で話を伺うと、知らないという声の中で「手早くできるから」や「温かいまま出てくるから」「いきなりの来客に出したから」などの意見が。

そしてどうやら、「いきなりの来客に出したから」というのが、いきなり団子の名前の由来としてよく言われているようです。

その真相を突き止めるため、「熊本の食文化」に詳しい尚絅大学の寺本ミユキ准教授に話を聞きました。

尚絅大学栄養科学科 寺本ミユキ准教授「『熊本の食事』という、大正末から昭和初期にかけての熊本の食生活を当時の人への聞き取りでまとめた書籍の中に、『いきなり団子』について『からいもは“いきなり”に切る。いきなりとは余分な時間をかけずにさっさと切ること』と書かれています。つまり、いきなり団子の名前は、『さつまいもをいきなりに(手早く)切って作った団子』で、後に『時間をかけずに急な来客にも提供できる料理』と解釈されたのではないか」

「手早くできる」や「いきなりの来客に」という意見は名前の由来と近かったようです。※諸説あり

では本当に「いきなり」作れるのか。先生に実演していただきました。

【材料】
★白玉粉(50g)
★中力粉(150g)
★塩(少々)
★水(粉の50%~60%)
・あんこ
・さつまいも

生地★は材料を混ぜ合わせ、よくこねてから30分ほど寝かせておきます。

さつまいもは輪切りにして皮をむき、いったん水に浸けて、水気を拭きとります。水に浸けることで変色を防ぎ、表面の余分なでんぷんを落とします。

生地は芋より一回り大きく手で広げて、芋とあんこを包みます。

全体をうまく包めたら、蒸し器に入れて約20分間蒸したら完成です。

家庭でも簡単に手作りできる「いきなり団子」ですが。

寺本准教授「実は作るのに1時間くらいはかかりますね。『いきなり』は難しい」

寝かせる・蒸す行程で勘付いてはいましたが、団子を“いきなり”作るのは難しいようです。

いっぽう近年「いきなり団子」は、進化を遂げています。

コーヒーに合う「いきなり団子」

熊本駅の肥後よかモン市場にある、創業40年を超える いきなり団子専門店「長寿庵」。

こだわりの詰まった5種類のいきなり団子は、外国人観光客からも人気を集めています!

長寿庵 熊本駅店 永井貴美子さん「いもは同じですが、生地が違ったり餡が違ったり、いろんな味を楽しめるように種類も増えてきている」

中でも注目は「焼きなり団子」!
これぞ郷土菓子と洋菓子のマリアージュ!

サクサクのクロワッサン生地で焼き上げた、渾身の一品です。

永井さん「コーヒーに合う洋風のいきなり団子のような。新しいものも取り入れて作っている」

団子にりんごのコンポート!?

益城熊本空港インターチェンジのすぐ近くに店を構える「むさし本舗」。

――いきなり団子は知っている?
東京から「初めて知りました。この店が一番美味しいと評判」

こだわりの芋と3種類のあんこに、店独自のうすい生地が絶妙に調和するいきなり団子。

多い時には、毎日400個近くを全てイチから手作りします。早い時は午前中に無くなるそう。

中でも特に人気の、進化系いきなり団子が『きなこいきなり』。

お餅のような生地の中には、芋とあんこ、そしてリンゴのコンポートが!

相性抜群でクセになる、新感覚のいきなり団子。甘酸っぱさとシャキッとした食感が魅力です。

進化を続ける「いきなり団子」ですが、街の声からは、そもそもの話が。

「私たちの頃はあんこが無かった気がする」
「あんこは入ってなかった」

寺本准教授に昔のいきなり団子について聞いてみると…。

寺本准教授「昔のいきなり団子はさつまいもを小麦粉の生地で包んだだけです。あんこは入っていませんでした」

昔、家庭でよく作られていたいきなり団子は、いきなりに切ったイモと小麦粉の皮だけと、いたってシンプルです。

寺本准教授「子どもの頃、祖母に作り方を教えてもらってこのタイプを作っていました」

学生「材料があれば簡単にできるなとおもって」

寺本准教授「家で作らなくなったら郷土料理は消えてしまう。少ない材料で手軽に作れるので、たまには家で作ってみてはいかがでしょうか」

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