4ホールで“+3”から起死回生 渋野日向子はメジャー2勝目へ「最後まで諦めない」

4打差5位でメジャーの最終日へ。悔しがる表情にも気迫がにじむ(撮影/村上航)

◇女子メジャー第3戦◇KPMG全米女子プロゴルフ選手権 3日目(22日)◇サハリーCC(ワシントン州)◇6731yd(パー72)

スタートの1番、フェアウェイからのセカンドでいきなりダフってグリーンをショート。打つまでのプレーテンポが異様に早かった3打目のアプローチも大きくオーバーし、あっさりボギーが先行した。渋野日向子は「最初の4ホールは自分がゴルフを“やらされてる感”があったような、自分でコントロールできてないなって感じだった。ある意味、吐きそうだった」と振り返る。

崩れかかった出だし4ホールは「“やらされてる感”があった」(撮影/村上航)

ラフを渡り歩いた3番はタフなアプローチを寄せきれずに1.5mを沈めて何とかボギー。4番も4mのパーパットが惜しくも外れて肩を落とした。出だし4ホールで3オーバー。2打差3位から出たメジャーの最終組で、早々に優勝戦線から脱落しかけた。

ターニングポイントは5番(パー3)。ティイングエリアで前の組のプレーを待つ間、キャディを務める田谷美香子マネジャーが渋野の胸を2回ほどたたいた(わりと強めに…)。「深呼吸して」。家族よりも一緒にいる存在からの言葉に強張っていた表情が和らぐ。「首、絞めないでよ」。ようやく笑顔で軽口を返すことができた。

最終組の緊張感に「ある意味、吐きそうだった」とも(撮影/村上航)

5番はバンカー越えで池も気になる難しい右ピン。セーフティにグリーンセンターに打っていく選手が多い中、5UTのショットがピンに絡んだ。「『やべー、狙ってねーよ』って思いながら…。運よく(ピンに)飛んでいってくれた」。4m強を流し込む初バーディが「変わるきっかけになった」とうなずく。

徐々に安定感を取り戻したショット。「不安要素が減っているから持ちこたえられた」(撮影/村上航)

6番(パー5)でガードバンカーからうまく寄せながら獲り切れなくても、8番で3パットボギーを喫しても、9番は返しの2.5mを決めきって耐えた。2バーディを奪った後半は16番で9m近い距離を沈めるスーパーセーブ。最悪のスタートから踏みとどまった1オーバー「73」には価値がある。予選落ちが重なった今季序盤の状態だったら、「(スコア的に)絶対に戻ってこられないですよ。間違いなく“はるかかなた”に行ってる。不安要素が前より減っているから、何とか持ちこたえられたのかな」

2019年「AIG全英女子オープン」以来の2勝目へ(撮影/村上航)

最終18番(パー5)、スライスラインに乗せた3.5mのバーディパットはカップに届かなかった。「むちゃくちゃムカつく」と苦笑したのも、4打に開いたトップとの差を詰めるチャンスだったから。「何が起こるか分からないコース。自分も耐えながら、攻めるところは攻めなきゃいけない。最後まで諦めないでいきたい」。メジャーの最終日に心の底から勝ちを目指せるメンタルが戻ってきた。(ワシントン州サマミッシュ/亀山泰宏)

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