中国製ワクチンに対する中傷は米国の覇権維持への執着の表れ

中国製ワクチンに対する中傷は米国の覇権維持への執着の表れ

 米首都ワシントンのホワイトハウス。(2023年1月20日撮影、ワシントン=新華社記者/劉傑)

 【新華社北京6月23日】米国防総省が新型コロナウイルス感染症の流行期間中、ソーシャルメディア(SNS)を利用してフィリピン人になりすまし、偽情報を流布して中国製ワクチンを中傷する作戦をひそかに展開していたとするロイター通信の報道を受け、幅広い非難が巻き起こっている。

 フィリピンのシンクタンク、アジア世紀戦略研究所のアンナ・マリンドグ-ウイ副所長は、新華社の取材に応じ「米国の行為はフィリピン国民に直接的な被害を与えた」と語った。

 世界保健機関(WHO)は新華社に対し、関連する報道に留意しているとし、偽情報は保健分野に対する大きな脅威で「ワクチン接種を政治的武器として利用すれば深刻な結果を招く」と指摘した。

中国製ワクチンに対する中傷は米国の覇権維持への執着の表れ

 米首都ワシントンの連邦議会議事堂。(2023年1月3日撮影、ワシントン=新華社記者/劉傑)

 ▽「中国を泥沼に引きずり込む」

 ロイター通信の報道によると、米国防総省はフィリピンでの中国の影響力を弱めようと、Ⅹ(旧ツイッター)上にフィリピン人を装ったアカウントを大量に開設し、中国のワクチンは「偽物」「中国を信じるな」などと投稿した。作戦に関わった米当局者は「われわれはこの件を公衆衛生の観点から見ておらず、いかにして中国を泥沼に引きずり込むかを考えていた」と語った。

 当時、フィリピンで唯一入手できた新型コロナワクチンは中国の製薬大手、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)傘下の北京科興中維生物技術製のワクチンだったが、米国の中傷作戦の影響で、フィリピン国内のワクチン接種率は非常に低かった。当時のドゥテルテ大統領は2021年6月、国民にワクチン接種を促すテレビ演説を行った。当時のフィリピンの人口約1億1400万人のうち、必要なワクチン接種を済ませた人は約210万人に過ぎず、同年の接種目標の7千万人を大幅に下回っていた。

 ドゥテルテ政権で報道官を務めたハリー・ロケ氏はSNSで「6万人以上のフィリピン人が新型コロナで死亡した。シノバック製ワクチンに対する偽情報作戦がなければ、そのうちの多くは生きられただろう」と述べた。

 フィリピンのファー・イースタン大学医学部の医師、陳祖従(ちん・そじゅう)氏は、ワクチンに対する米国の中傷が社会にパニックを引き起こし、一部の人にワクチン接種を放棄させ、フィリピンの人々の健康を著しく脅かし、新型コロナと闘うフィリピンの努力を妨げたと指摘した。

 米ダートマス大学医学部の感染症専門家ダニエル・ルーシー氏は、米国の行動は「弁解の余地がない」と指摘。「米国政府がこのようなことをしたと聞き、非常に驚き、失望し、幻滅している」と語った。元米国家情報会議(NIC)議長のグレゴリー・トレバートン氏も、米国がワクチン問題でデマを広め中傷したのは「一線を越えている」との考えを示した。

中国製ワクチンに対する中傷は米国の覇権維持への執着の表れ

 フィリピンのケソン市でバス停に向かう人々。(2022年1月17日撮影、ケソン=新華社配信)

 ▽「中国のワクチンは信頼できる」

 中国は新型コロナの流行期間中、シノバック製ワクチンなどを公共財として世界中に提供し、幅広い賛同を得た。WHOは最近、新華社の取材に「シノバック製ワクチンは安全で、新型コロナ感染による重症化や死亡を効果的に予防できる」と強調。WHO公式サイトの関連ページでも、シノバック製ワクチンの安全性と有効性が詳細に説明されている。

 WHOは21年6月1日、シノバック製新型コロナワクチンの緊急使用を承認した。同社の広報を担当する袁幽薇(えん・ゆうび)氏は17日、シノバック製の新型コロナ不活化ワクチン「コロナバック」は世界60以上の国や地域、国際機関で使用許可を得ており、ワクチンの直接輸出や他国企業との協力生産を通じて累計11億回分以上を海外に供給してきたと説明した。

 シノバックはブラジルやチリ、トルコなど複数のパートナーと共同で新型コロナワクチンの研究を行い、コロナバックに関する臨床研究成果を世界中で600件以上発表してきた。研究成果は、同社のワクチンには優れた安全性と免疫原性があることを示している。

 フィリピン・マニラ在住のラミ・プライドさんは、自分を含むきょうだい全員が中国製ワクチンを接種したと説明。「私たちは中国を信じている。中国のワクチンは信頼できる。中国は困難な時に私たちを助けてくれた」と語った。

 ドゥテルテ前大統領の報道官を務めたロケ氏は、米国はいつまでたってもフィリピンにワクチンを提供しなかったとし「フィリピン人に対する米国人の考えがこれで分かった。米国人は私たちを友人とは全く思っていない」と指摘。米国がフィリピンにワクチンを提供しないならそれまでだが「他国が提供したワクチンを悪く言う必要があるのか」と疑問を呈した。

 ロイター通信は米国の中傷作戦について、ワクチン共有が中国にもたらす影響力への嫉妬と恐れからきていると指摘。作戦に関わった米当局者は「パートナーとのワクチン共有がうまくいかず、われわれにできたことは、中国製ワクチンを中傷することだけだった」と語った。 

中国製ワクチンに対する中傷は米国の覇権維持への執着の表れ

 フィリピン・マニラのニノイ・アキノ国際空港で、北京科興中維生物技術のワクチンを運ぶ空港職員。(2021年3月24日撮影、マニラ=新華社配信)

 ▽「覇権維持に対する米国の執着の表れ」

 アジア世紀戦略研究所のマリンドグ-ウイ副所長は「米国は地政学的動機に基づいて中国製ワクチンを中傷し、新型コロナとの闘いに必要な国際協力を破壊した。覇権維持に対する米国の執着の表れだ」と指摘した。

 中国製ワクチンへの中傷は、世界を脅かす米国の数多い悪行の「氷山の一角」に過ぎない。今回の件から、手段を選ばず自らの覇権を守る米国の常套手段が見て取れる。

 一つ目は、うそをでっち上げ、相手を徹底的に悪者扱いする。例えば、イラク戦争を仕掛ける口実を作るため「大量破壊兵器の保有」という罪をでっち上げ、シリア政府に化学兵器を使用して民間人に危害を加えたというレッテルを貼るため、民間団体「シリア民間防衛隊(ホワイト・ヘルメット)」にフェイク動画を作る資金を提供した。

 二つ目は、不和の種をまき、対立をあおる。ロイター通信は3月、米中央情報局(CIA)が19年当時、中国のSNS上で「一帯一路」構想に関するうそを広め、中国を誹謗する情報を海外メディアに提供する権限をトランプ政権から与えられていたと報じた。米ジョージア大学のロック・ジョンソン名誉教授は、このような「秘密の活動」は他の地域に「思想を植え付ける」ことを目的としており、冷戦時代にはよく行われていたと指摘する。

 三つ目は、同盟国を「裏切り」、自国の利益のために他国を犠牲にする。米国は自国の利益に関わる問題で、いわゆる「同盟国」に対しても決して手加減しない。フィリピンがその最たる例である。中国製ワクチンを中傷する米国の行動がフィリピンで公衆衛生の信頼危機を引き起こし、結局はフィリピン国民がその代償を払うことになった。ロイター通信は、フィリピンの新型コロナ感染患者の高い死亡率とワクチン接種が妨害に遭ったことは無関係ではないと報じた。米国によるこうした裏切り行為は枚挙にいとまがない。巨大な監視ネットワークを利用してドイツやフランスなど同盟国の要人の通信を傍受し、欧州諸国に「関税のこん棒」を振り回して、フランス企業アルストムを「解体」させ、米国企業の競争相手を取り除く手助けをする。

 米国の歴史学者バーナード・ルイス氏は著書「Notes on a Century」に「米国との同盟締結には、いつ背中を刺されるか分からないという問題がある」と率直に記している。

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