定年後は「もう、夫の料理を作りたくない」長年の役割、どう変える? 坂東眞理子さんのすっきり人生相談

仕事、健康、人間関係、親の介護、老後のお金……50代からの人生には不安や迷いがいっぱい。そんな私たちに「ウィメン・ビー・アンビシャス。自分で自分の人生に責任と覚悟をもって生きていこう」とエールを送ってくれる坂東眞理子さんが、皆さんのお悩みを解決します。

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©️廣江雅美

プロフィール
坂東眞理子
ばんどう・まりこ●1946年富山県生まれ。東京大学卒業後、総理府(現内閣府)入省。埼玉県副知事、オーストラリア・ブリスベン総領事、内閣府初代男女共同参画局長などを務め、退官。現在、昭和女子大学総長。『女性の品格』『70歳のたしなみ』『幸せな人生のつくり方』など著書多数。

相談 ①
もう、料理を作りたくない

結婚して35年、得意でない料理や弁当作りを毎日頑張ってきましたが、私の定年を機に、家族に「調理卒業宣言」をしたいです。子どもたちは何とかなるとして、夫は手作りにこだわる人なので(姑が料理上手だったのです)、どうやったらわかってもらえるでしょうか。ちなみに夫は料理がほとんどできません。(60歳・業務委託)

気負わずに「調理卒業宣言」を。舌の肥えた夫は、料理上手の素養あり

定年後からの男性の料理教室もおすすめ

料理が得意ではないと言いながら、35年も続けてこられたのですね。そして夫は手作りにこだわりながらも、自分では料理ができないとのこと。つまり相談者の作る料理がおいしかったということでしょう。長い間、本当にご苦労さまでした。

これまで十分頑張ってきたのですから、もう「調理卒業宣言」をしていいと思います。外食や冷凍食品、手作りのお総菜屋さんやデリバリーなどを上手に活用して。たまに気が向いたら料理をして、手作りにこだわらず、自由に調理と向き合う。気負わずに卒業宣言してみましょう。

また、これからは夫に料理を覚えてもらうのもいいかもしれません。姑さんが料理上手だったということは、夫は舌が肥えているはず。「あなたは私より舌が肥えているから料理してみたら? 私より上手にできるかもしれないわよ」などとおだてて、台所に立つように誘導してみるのも手です。

今は公民館や男女共同参画センター、ベターホーム協会など、いろいろなところで定年退職後の男性向けの料理教室が開かれています。夫にとっても新しい趣味や仲間づくりのきっかけになるかもしれませんから、ぜひすすめてみてください。

相談②
息子夫婦が離婚協議中

私の息子たちは高学歴で、医師や弁護士など「エリート」に育てました。が、去年、長男の嫁から「あなたの息子は、人の気持ちがわからない人。離婚したい。子どもの親権はもらう」と言われてびっくり! 孫に会えなくなるのが辛いし、何より私の育て方が間違っていたのかと悲しくて。息子夫婦に、姑としてできることはありますか?(72歳・無職)

子どもの人間性は、親の育て方や教育だけに責任があるわけではありません

離婚は、人として成長する機会

息子の育て方を間違えたのか? 相談者は、男の子はしっかり勉強して、いい学校を出て、ちゃんとした仕事につけば順調な人生を約束される、と思っていたかもしれません。そして親子で頑張って成功したのです。

ですが、母親にとっては高学歴でエリートの自慢の息子でも、お嫁さんからすれば、「人の気持ちがわからない人」。夫婦の関係は当事者にしかわかりません。いわゆる相性ですが、性格、価値観などいろいろなことが影響します。

現代は3組に1組の夫婦が離婚する時代。姑としてできるのは、息子夫婦の決断を受け入れることです。そして、もし離婚することになったら、息子には、子ども(相談者にとっては孫)との面会交流をきちんと取り決め、財産や養育費などでもめごとが起こらないようにするためにも、専門の弁護士を頼むよう、アドバイスするのがいいと思います。相談者が72歳ということは、息子は40歳過ぎでしょうか。まだ若く、離婚しても別のご縁があって再婚することもありえます。

また相談者は、「私が育て方を間違えたせいだ。自分はダメな母親だ」と自己否定する必要は全くありません。大人になっている息子の人間性は、本人の責任です。子どもの人間性は、親の育て方や教育だけに責任があるわけではなく、その子がどのような友人、指導者に出会うかなど、いろいろな条件に左右されます。

多くの人は、何かに挫折したり悲しい思いをしたりすることで人間性に目覚めます。「エリート」といわれる人たちはそういう経験が乏しいので、人の悲しみや苦しみが理解できないと思われがちです。が、エリートなりの別の悩みも経験しています。息子は離婚によって挫折を経験し、多くを学び成長するかもしれません。実際、アメリカでは失敗から学んだバツイチが一番いい結婚相手だといわれているくらいです。

離婚は息子が人として成長するチャンス。温かく見守りましょう。

※この記事は「ゆうゆう」2024年7月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。


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