間違いなく父親のDNAを受け継いでいる!マンCのヘスキー兄弟に要注目【英国人コラム】

ワールドサッカーダイジェスト6月6日号で、恒例企画「ベストプレーヤー」の選考会に参加した。スタジアムでの現場取材とはまた違った発見や楽しみがあって、とても有意義な時間を過ごすことができた。

プレーヤーOBとして迎えたのはエミール・ヘスキーだ。言わずと知れた元イングランド代表のFWで、マイケル・オーウェンと好連携を築いたリバプール時代がとりわけ印象に残っている。

屈強なフィジカルと機動力を併せ持ち、前線でのボールキープ、気の利いたスペースメークでオーウェンを輝かせた最高のパートナーだった。利他的で規律正しく、最高の点取り屋ではなかったかもしれないが、代表でもクラブチームでも「最高のチームメイト」として尊敬を集めたその人柄が、言葉の端々から感じられた。

現役引退は2016年。ユース時代を過ごしたレスターを皮切りに、リバプール、バーミンガム、ウィガン、アストnン・ビラ、オーストラリアのニューカッスル・ジェッツ、そして最後はボルトンと7チームを渡り歩いた選手キャリアは22年に及び、プレミアリーグの通算成績は516試合・110ゴール。出場試合数は歴代7位というレジェンドだ。

ヘスキーには2人の息子がいて、どちらもフットボーラーで、ともにマンチェスター・シティの下部組織に所属している。2005年12月生まれで現在18歳のジェイデンと、2008年1月生まれで現在16歳のリーガンの兄弟だ。ジェイデンはシティのU-18チームでキャプテンの重責を担い、ピッチ内外での真摯な取り組みで模範を示すリーダーとして信頼を集めている。

兄ジェイデンのU-18チームに弟リーガンが飛び級で加わり、兄弟揃ってスタメンで公式戦のピッチに立ったのが2023年11月のUEFAユースリーグ、ホームでのヤングボーイズ戦だ。兄がCF、弟が左ウイングで前線に並び、大物ぶりを見せつけたのが弟のリーガンだった。開始9分にシティがPKを得ると、リーガンがキッカーを務めてこれを決め、3-0の勝利に導くのだ。ユースリーグのデビュー戦で物怖じせずに先制のPKを決められる15歳(試合時)がどれだけいるだろう。

ジェイデンとリーガンの兄弟は、間違いなく父親のDNAを受け継いでいる。

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さて、「ベストプレーヤー」の本編では収まりきらなかった僕のセレクションをざっと紹介してみよう。ベストイレブンという形で選び抜いた“マッケンジー・ユナイテッド”がこれだ。

GKはアストン・ビラのエミリアーノ・マルティネス。倒れ込んでファウルをアピールするニール・モパイの胸ぐらを掴んで引っ張り起こそうとしたブレントフォード戦(17 節)の乱暴な振る舞いや、相手のサポーターを煽ってイエローカードを食らったリール戦(ヨーロッパリーグ準々決勝)の挑発行為などトラブルをまき散らしているが、そのリール戦では2本のPKをストップして勝利をもたらすなど、決定的な違いを作り出していた。

最終ラインはロンドン勢だ。CBはウィリアム・サリバとクリスティアン・ロメロ、SBはペドロ・ポロとマロ・ギュスト。ポロは「偽SB」として機能し、ギュストは推進力を発揮して故障離脱のリース・ジェームズの穴を埋めた。2人とも右SBだが、ギュストは左SBにも対応可能なのでギュストを左に回そう。

中盤は、ロドリをアンカーに、インサイドハーフはマーティン・ウーデゴーとジョン・マギン。デクラン・ライスはアンカーにカテゴライズして、僅差でロドリに及ばないと判断した。左足の正確なパスワークとダイナミックな走り込みでアストン・ビラの大躍進を支えたマギンは、6ゴール・4アシストで二桁10ゴールに直接関与と数字も文句なしで絶対に外せない。

前線は、オリー・ワトキンス、フィル・フォデン、コール・パーマーの3トップだ。ワトキンスは得点ランク4位の19ゴールに、リーグトップの12アシストと圧倒的なパフォーマンスでビラの躍進の立役者となった。

パーマーは今シーズン最大の発見だ。シティから移籍した1年目のチェルシー、それも不振を極めたチェルシーで、得点ランク2位の21ゴールは、その何倍もの価値があるだろう。

フォデンは本編でMVPに選出されたように、成熟度を高めてシティの、さらにはプレミアリーグの顔とさえ呼べるような存在となった。

ブカヨ・サカより、モハメド・サラーより、23-24シーズンはパーマーとフォデンを選ばないわけにはいかない。

最後に、監督はボーンマスのアンドニ・イラオラ。就任1年目でアグレッシブな攻撃サッカーを軌道に乗せて12位に導いた手腕は、タイトルにも値するだろう。

文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)

Steve MACKENZIE
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーターだ。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で手掛け出版した。

※『ワールドサッカーダイジェスト』2024年6月6日号の記事を加筆・修正

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