石川遼がツアー19勝目 “冷静な判断”が生んだ価値ある1勝「内容の濃いものを感じた」

まさに千両役者。石川遼が選手会主催トーナメントを制した(撮影:原田健太)

<JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP by サトウ食品 最終日◇23日◇西那須野カントリー倶楽部(栃木県)◇7036ヤード・パー72>

ウイニングパットを決めた瞬間、安どの表情を浮かべた。2打差の2位から出た石川遼が6バーディ・2ボギーの「68」。トータル21アンダーまで伸ばし、2022年11月の「三井住友VISA太平洋マスターズ」以来となるツアー19勝目を挙げた。「優勝争いしているとそこでしか感じられないプレッシャーがあって、自分も試されましたし、アドレナリンもいい感じで出ました。いいプレッシャーを感じられて良かったです」。約1年半ぶりの優勝を噛みしめた。

前半からパープレーを続けていたが、5番で54度のウェッジで約1メートルにつけると、この日の初バーディを奪い首位タイへ。7番でも54度で1.5メートルにつけて2つ目のバーディ。精度の高いウェッジショットを武器に、単独首位に躍り出た。

しかし、後半に入った11番パー5ではトラブル。右ドッグレッグのレイアウトで、林越えを狙ったティショットが木にあたってブッシュに入り、ボールはロスト。「そこから自分がどうなるのかな、試されていると思っていました」。ティショットを打ち直し、残り230ヤードの4打目をグリーン横のラフまで運んだ。5打目は58度のウェッジでアプローチ。約20センチに寄せて、ボギーでなんとかしのいぎ、流れを手放さなかった。

すると13番で取り返すと、続く14番でも連続バーディを奪い再び首位へ。そして迎えた16番パー5は再び右ドッグレッグのレイアウトだった。「絶対にボギーをしないマネジメントを考えた」とフェアウェイをキープ。セカンドショットは、2オンを狙わずグリーン手前に刻み、58度のウェッジで2.3メートルにつけて再びバーディ。終始“冷静な判断”が勝利を手繰り寄せた。

2週前の国内メジャー初戦「BMW日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」では最終日に「63」をマークし、トータル13アンダーの首位タイでホールアウト。しかし、岩田寛とのプレーオフに敗れていた。「3日目、最終日に上手くいかない、上手くいかないと感じているなかでも優勝争いにいられた。背中を押してくれる優勝だったと思いますし、すごく内容の濃いものを感じることができました」と悔しさを晴らした。

8度目の挑戦で予選落ちに終わった前週の「全米オープン」で感じたものもある。「ツアー選手権の内容を引っ下げて渡米しましたけど、課題を感じた。早く次の海外メジャーに行きたくて行きたくてしょうがないです。でも、あしたいきなり『どうぞ』と言われてももう少し準備させてくれとなるけど、その日がいつ来てもいいぐらいに燃えています」。今回の優勝を経て、海外へのモチベーションがさらに高まった。衰え知らずの向上心で、シーズンの残りを戦っていく。(文・神吉孝昌)

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