「テレビで見ていて特別感があった」山下美夢有が“逆転”でパリ五輪代表入り 古江彩佳は僅差で逃す

2位に入った山下美夢有が代表争いを制した(撮影:南しずか)

<KPMG全米女子プロゴルフ選手権 最終日◇23日◇サハリーCC(米ワシントン州)◇6731ヤード・パー72>

「パリ五輪」代表争いが決着した。3週間前の「全米女子オープン」を制した笹生優花はすでに当確。そして今大会で2位タイに入った山下美夢有が、その権利を得ることがほぼ確実になった。

山下は古江彩佳、畑岡奈紗と2枠目を争っていた。開幕前は日本勢4番手につけており、わずか0.13ポイント差でリードしていた2番手の古江を逆転することを目指していた。3番手の畑岡は予選落ちを喫して、選考レースから脱落。決勝ラウンドでは山下と古江の攻防戦が繰り広げられ、山下が2位タイ、古江が19位タイとなったことで、世界ランキングを基にした五輪ランキングで山下が古江の順位を上回る見込みだ。

「出られたらいいなと思っていたので、日本代表として頑張りたい」。五輪のゴルフ競技は、2016年「リオ五輪」で112年ぶりに復活。当時はまだアマチュアだったが、「(五輪は)テレビでよく見ていたので、特別感はあった。出たいとかいうのもなくただ見ていただけだったけど、ゴルフという競技が増えてうれしいと思っていた。今年頑張れば、行けるチャンスがあるんや、と」。そして、その切符をつかみとった。

ここまで五輪の質問を何度も、何度も受けてきた。「皆さん聞くので(笑)。同じ会話になっちゃうんですけど、聞かれることは分かっていたので、私自身がいまやりたいこと、やるべきことをやれば結果もついてくると思っていた」。五輪に対するプレッシャーを感じることもなく、割り切りながら選考期間を過ごし、そして最後に結果はついてきた。

「東京五輪」では稲見萌寧がプレーオフの末、銀メダルを獲得した。「すごいなと思いました。あの舞台でメダルを取れるのはすごいこと」。次は日本の女王が“オリンピアン”となり、メダル獲得へと挑んでいく。

一方、逆転負けを許したのは古江。ホールアウト時点では山下の結果待ち、という状況だった。「(相手が崩れるのは)願わないので、フタを開けてみてという感じかな。最後の試合が終わったので気をラクにしたい」と気丈に話していたが、“吉報”は届かなかった。

東京五輪では稲見、渋野日向子との2枠目争いの末に代表入りとならず、涙を流した。今年の開幕戦から、パリ五輪への決意をにじませていた。「振り返ってみると、東京五輪は悔しかった。出たかったから。それなら黙っているより、“出たい”という意識を出そうと思って口にしています」と話し、世界ランキングを上げることを目指した半年間だった。

昨年はトップ10入り8回。今季もここまで15試合に出場して、8度のトップ10入りを数える。トップ10入り回数は、世界1位のネリー・コルダ(米国)らを抑えてツアー1位に立っているが、“優勝”の2文字を手にできなかった。「いままで上位をキープできたりとか優勝争いしているときに勝っておけば…というのが一番」と、3年に及ぶ選考レースを振り返った。

ル・ゴルフナショナルを舞台に、女子は8月7~10日、男子は8月1~4日に開催。男子は松山英樹、中島啓太が日本代表入りを決めている。(文・笠井あかり)

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