「ベストプレーヤーを語るなら優勝回数を見るべき」ケンプが選ぶGOATはチェンバレンではなく“真の勝者”<DUNKSHOOT>

現地時間6月20日(日本時間21日)、マット・バーンズ(元ロサンゼルス・クリッパーズほか)、スティーブン・ジャクソン(元ゴールデンステイト・ウォリアーズほか)がホスト役を務める人気ポッドキャスト番組『ALL THE SMOKE』の最新エピソードが公開された。

今回のゲストはシアトル・スーパーソニックス(現オクラホマシティ・サンダー)などで活躍したショーン・ケンプ。全盛時に208cm・104kgのパワーフォワードとしてプレーしてきた男は、超人的な身体能力から豪快なダンクや強烈なブロックショットをお見舞いし、堅実なジャンパーやポストプレーでも得点を重ねてオールスターに6度、オールNBAチームに3度名を連ねた。

ケンプはソニックス、クリーブランド・キャバリアーズ、ポートランド・トレイルブレイザーズ、オーランド・マジックに所属。キャブズ時代途中から20kg以上も増量して全盛時のキレを失い、33歳でNBAから去ったとはいえ、ソニックスではゲイリー・ペイトン、デトレフ・シュレンプらとともに主力として君臨した。
なかでも1996年にはウエスタン・カンファレンスを勝ち上がってNBAファイナルに進出してシカゴ・ブルズと対決。マイケル・ジョーダン、スコッティ・ピッペン、デニス・ロッドマンといった豪華なメンバーが揃う優勝候補に2勝4敗で敗れるも、ケンプはシリーズ平均23.3点、10.0リバウンド、1.3スティール、2.0ブロックにフィールドゴール成功率55.1%の活躍を見せた。

ケンプはNBAキャリア14シーズンで、ジョーダンとピッペンに加え、アキーム・オラジュワン(元ヒューストン・ロケッツほか)、カール・マローン(元ユタ・ジャズほか)、チャールズ・バークレー(元フェニックス・サンズほか)、クライド・ドレクスラー(元ブレイザーズほか)、シャキール・オニール(元ロサンゼルス・レイカーズほか)、コビー・ブライアント(元レイカーズ)など、プレーオフで数多くのスーパースターたちと戦ってきた。

そうしたなか、番組内で「GOAT(史上最高の選手)は誰なのか」という話題になり、ケンプはジョーダンやコビー、レブロン・ジェームズ(レイカーズ)でもなく、ボストン・セルティックスの偉大なビッグマンを挙げていた。
「こう言うと非難する人がいるだろうけど、俺の中ではビル・ラッセルなんだ。リーディングスコアラーでなくともベストな存在であり、あらゆることをこなしてきた」

208cm・98kgのラッセルは、セルティックス一筋13シーズンをプレーし、選手兼監督を含めて11度のNBAチャンピオンに輝いたビッグマン。11度の優勝は歴代最多で、MVPに5度、オールスターに12度、オールNBAチームに11度選ばれてきた。

レギュラーシーズン通算963試合でキャリア平均15.1点、22.5リバウンド、4.3アシスト、プレーオフ通算165試合では同16.2点、24.9リバウンドと、同時代に1試合100得点を記録するなどコート上を支配したウィルト・チェンバレン(元フィラデルフィア・ウォリアーズほか)のような爆発的なスコアラーではない。

それでも、ケンプはラッセルがコート上で残してきたレガシーをこう話していた。
「彼は味方を助けることができ、(自チームへ)ボールを保持させてきた。ビル・ラッセルはブロックショットを決めてボールをキープした初の選手だったんだ。俺たちはブロックして客席の17段目くらいまで弾いてきたけど、彼の場合はそうじゃなかった。

長い間バスケットボールを観てきて、ウィルト・チェンバレンは間違いなくビーストだったが、ビル・ラッセルの方がハードにやっていた。だからこの際正直に言う。すべてにおいてベストなプレーヤーを語るなら、どれだけ多くのチャンピオンシップを勝ち獲ってきたかを見るべきなんだ。彼の功績を考えれば、彼こそがその位置にいるべきだ」

ケンプはNBAキャリアのなかでエース、主力の一角、スターター、ベンチスタートのロールプレーヤーと立ち位置が変えながら10度プレーオフへ進出したが、結局チャンピオンシップを手にすることはできなかった。

ポストシーズンで勝ち抜くことの難しさを痛感しているからこそ、ラッセルに最大級の賛辞を送ったのだろう。

文●秋山裕之(フリーライター)

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