長崎県と受注者支援3機関が協定 賃上げへ価格転嫁後押し

連携協定調印式に出席した宮地部長(前列左から3人目)や関係者=県庁

 原材料やエネルギーのコストが高止まりを続ける中で中小企業や小規模事業者が賃上げをするには、適切な価格転嫁ができるかどうか次第。そこで長崎県は17日、価格転嫁の相談対応や支援を担う3機関と連携協定を結んだ。発注者と効果的な価格交渉ができるよう受注者を後押しする。
 3機関は▽中小企業庁の委託で県商工会連合会が設置した無料経営相談所「県よろず支援拠点」▽同庁の委託で県産業振興財団が設置した、取引上のトラブルに関する無料相談窓口「下請かけこみ寺」▽県中小企業診断士協会。公正取引委員会九州事務所と九州経済産業局がオブザーバーとなった。
 よろず支援拠点と下請かけこみ寺は各都道府県にあり、今回のような趣旨の協定を都道府県と締結するのは初めて。各機関の特色を生かして相談体制の効率化や強化を図る。事例やノウハウの情報を共有し、一体的な情報発信で効果を上げる。
 昨年6月、県や国、県内経済労働団体の計13機関が締結した「価格転嫁の円滑化に関する協定」は、発注者側と受注者側の双方が参画する形だった。“下請けいじめ”を防いで取引適正化に努めることなどを発注者側が約束する「パートナーシップ構築宣言」を普及させ、双方の意識改革や機運醸成を図っている。併せて今回、受注者を支援する関係機関も連携することで、原価計算に基づく交渉など具体的な行動を受注者に促す。
 中小企業庁と県がそれぞれ昨年秋、「直近6カ月間の価格交渉の状況」を受注者にアンケートしたところ、コストが上昇したにもかかわらず交渉を発注者に申し入れていない割合は県内では36.5%。全国の22.5%を上回った。
 コスト上昇分を契約金額の引き上げで賄った割合を示す「価格転嫁率」も、「3割以下」と答えた受注者の割合が県内は43.2%に上り、全国の19.6%より圧倒的に多かった。価格転嫁が難しいと考える理由は「原価計算や根拠の説明が難しい」が県内で21%と最多だった。
 県庁であった締結式で、宮地智弘県産業労働部長は、パートナーシップ構築宣言の登録社数が円滑化協定締結前後の約1年間で189社から470社に増え、増加率が九州・沖縄8県で1位だったとして「機運醸成は一定進んでいる」と説明。3機関のトップと協定書に署名した。

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