元女王ムグルサが男子テニス界のビッグ3による“弊害”を指摘!「グランドスラムで3回優勝しても些細なことに聞こえてしまう」<SMASH>

約15年以上にわたりノバク・ジョコビッチ(セルビア/現2位)、ラファエル・ナダル(スペイン/元1位/現258位)、ロジャー・フェデラー(スイス/元1位/引退)の“ビッグ3”が牽引してきた男子テニスのATPツアー。今年4月に現役を退いた女子テニス元世界1位のガルビネ・ムグルサ氏(スペイン/30歳)は、3人の伝説的巨星が残してきた功績があまりにも大きすぎるがゆえ、現代のテニス界が“ある弊害”を被っていると主張する。

その弊害が顕著に表れている背景には、3人の四大大会優勝回数が関係しているとムグルサ氏は語る。それぞれジョコビッチは24回、ナダルは22回、フェデラーは20回となっており、全員合わせるとのべ60回以上。今後はこういった記録が再び生まれることはないと言われているほどなのだから、改めてビッグ3のすごさを実感させられる。それを踏まえてムグルサ氏は自身の考えをこう口にした。

「ビッグ3は全てを高みに引き上げてきたから、(例えば)グランドスラム(四大大会)で3回優勝しても些細なことのように聞こえてしまう。それは(ある意味で)悲劇だと思うわ。本来は様々な選手が優勝を経験するはずの四大大会でそういうことが起こるのは…あの時代は本当にタフだった。常にあの3人がいたのだから」
周知の通りファンの間では、ビッグ3のうちの誰が“史上最高の選手”なのかを決める「GOAT論」が年々加熱傾向にあるが、ムグルサ氏は昨季だけで3つの四大大会(全豪・全仏・全米)を制したジョコビッチを「テニスの質に関しては一番だと思う」と評価する。続けて「彼はとても面白い人よ。コート外で何度も彼と話したことがあるけど、彼はとても親切で、一緒に過ごしていて楽しかったわ」と自身の現役時代におけるジョコビッチとの思い出を明かした。

一方でプレーヤーとしてのムグルサ氏の推しはフェデラーなのだそう。ただし同郷のナダルも「とてつもなく応援している」という。「ジョコビッチはセルビアのというか、東欧ならではの個性があるけど、3人とも好きよ」とも語り、1人だけを贔屓しているわけではないと強調した。

ジョコビッチ、ナダル、フェデラーの異次元さが今の若手の存在感をかすめてしまっている節は確かにある。ただ、あの3人のようなプレーヤーが今後出てくる可能性が極めて低いことを考えれば、それも致し方ないことだと受け入れる必要はあるかもしれない。これからの男子ツアーをどう楽しむかはファンの見方によっても変わってくるのではないだろうか。

文●中村光佑

© 日本スポーツ企画出版社