音や感覚頼りに攻守「グランドソフトボール」佐賀代表チームマグピーズSAGA【佐賀県】

目が不自由な人が聞こえる音や感覚を頼りに攻守を繰り広げるソフトボール、「グランドソフトボール」
今回は、地元佐賀で開催される全障スポへの出場を目指し結成した佐賀代表のチームを紹介します。

頼りになるのは周りの人の声の誘導とボールが地面を転がるかすかな音。
音が大事なスポーツのため、観客も応援をやめて静かにプレーを見守ります。
「グランドソフトボール」。
目が不自由な人でも楽しむことができるスポーツです。

いまから51年前の1973年から正式競技に。
地面を3バウンド以上で転がる球を、バットで打ちます。
野球やソフトボールより1人多い10人でチームを構成しそのうち4人は全盲で、ユニフォームの袖に目印を付けてプレーします。

【マグピーズSAGA 前田浩二さん】
「このグランドソフトボールっていうのはすごく難しくて弱視の人と全盲の人のプレーが違うんですよね。全盲の人が捕ればゴロでもアウトが取れるので全盲性のプレーを注目してほしいなと思います。」

この競技のキモは全盲の人と弱視の人が入り混じってプレーするところにあります。
今年秋に開催される全国障害者スポーツ大会の正式競技にも選ばれているグランドソフトボール。
全障スポへの出場を目指して佐賀のチーム、「マグピーズSAGA」は誕生しました。その強みは

【マグピーズSAGA 大束導正コーチ】
「やっぱり個人じゃないですかね。バイタリティ溢れる選手が多いのでグランドソフトだけじゃなくて社会生活においても個人個人の強さはあると思います」

マグピーズ佐賀のピッチャー、佐藤悟さんは先天的な全盲です。
佐藤さんの得意な変化球はカーブ。
なんとその球は、ベース1つ分くらい変化し打者を翻弄します。
佐藤さんは普段マッサージ指圧師として、週に3日、鳥栖の整形外科に出勤しています。
佐藤さんはこの整形外科に勤めて3年目。
一日平均13人の患者さんにマッサージを行うという佐藤さんはベッド周辺の備品の場所をしっかり把握しているため手際よく、それでいて丁寧に施術や作業を行っていました。

【同僚】
「佐藤さんは真面目というか一生懸命。患者さんに対して積極的に頑張ってます患者さんが誰かなとか混むかなとか声をかけあっていますお互い目が悪いからね」

「お疲れ様でした」
「また木曜日に」
「失礼します」

午後1時、勤務を終えた佐藤さんは病院から徒歩で約5分ほどの鳥栖駅から電車を利用して帰ります。

【佐藤さん】
「もう僕は本当耳ですね。今日も病院から鳥栖駅まで行きましたけれども周りの音をずっと聞いて判断しながら歩く。」

建物を解体する音や選挙カーの音などで周りの音を判断できなくなるのが一番怖いのだということです。
そうして鳥栖駅から電車に乗り、佐賀駅で乗り換え、小城駅へ。
小城駅からは自宅までは歩道に点字ブロックがないためタクシーを利用して移動します。
自宅に到着した佐藤さんは、お弁当箱と水筒を洗って片づけます。
何度も反復し慣れて感覚を掴むこと、そして耳を澄まして周りの状況を把握すること。
勤務先や日常生活で行っていることがそのまま競技にも生かされているといいます。

6月8日。
全障スポに出場する九州代表チームを決める予選会も兼ねたリハーサル大会が開かれました。
マグピーズSAGAは開催県の地元チームということで全障スポへの出場が確定しているので、この日は交流試合。対戦相手は熊本です。

試合は佐賀の攻撃で始まりましたが先制点は熊本。
その後満塁のチャンスもありましたが得点には繋がらず、結果は…0対10で黒星となりました。

【佐藤さん】
「ピッチングの内容は緩急をうまく付けられなかったうまくいかなかった」

配球の精度をもう少し上げていきたいと振り返る佐藤さん。
そんな佐藤さんとマグピーズSAGAの目標は…

【佐藤さん】
「とにかく全障スポでまずは1勝ということをチームのみんなで1つのテーマとして頑張っていますのでなんとかチームのスピードを上げて1勝できるように頑張りたいと思います」

全障スポ開幕まで約4か月。
グランドソフトボールは白石町総合運動場で10月26日と27日に行われます。

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