「万物、命の豊穣を願う心が火焔土器文様の神髄」猪風来美術館で”縄文の心”に触れるワークショップ【岡山・新見市】

今月(6月)上旬、新見市でユニークな陶芸教室が開かれました。縄文土器を参考にしながら土器や土偶作りが楽しめるその名も「縄文ワークショップ」です。

今月9日、新見市の猪風来美術館で開かれた陶芸教室です。ただし参加者が作っているのは「普通の焼き物」ではありません。

(参加者)
「初めて歩く赤ちゃんみたいなものを作ろうと思っています」
「火焔土器みたいなものを作ろうと思っています」

「縄文ワークショップ」では、なんとオリジナルの縄文土器や土偶作りが楽しめるのです。

ここは長年縄文土器を研究し、独自の縄文アートを制作する芸術家・猪風来さんの作品およそ1000点を所蔵する美術館です。

現在、縄文土器の代名詞ともいえる火焔土器をはじめとした30点の土器・土偶を展示する火焔土器展が開催されています。

(縄文造形家 猪風来さん)
「これが日本で最も大きな火焔土器なんです。ただし欠損が多い。これが完品であれば日本で最もすばらしい火焔土器と呼ばれる代物です」

貴重な作品が一堂に会する西日本最大級の縄文土器の展覧会です。複雑な文様には縄文人の深い精神性が現れているといいます。

(猪風来さん)
「万物、命の豊穣を願う心。母なる大地は全ての命を生み出しているわけですからその命の全てをここに象徴・表現した。これが火焔土器文様の神髄だと」

この展覧会の関連イベントとして企画された今回のワークショップ。実際の縄文土器に想像力を刺激されながら自由に創作が楽しめる贅沢な体験です。

(参加者)
「今『縄文ブーム』が自分の中で来ているので、作らせていただこうと参加しました」
「縄文時代の人たちが争うことなくみんな仲良く暮らしていたというのを聞いて、それで『縄文』に魅かれて…」

「縄文の心の神髄に初めての人も心を開いてストンと入っていける」

猪風来さんとともに作り方を教える土田哲也さんも、かつては参加者と同じ縄文ファンの一人でした。

(指導員 土田哲也さん)
「自分も本に出ているような縄文土器が作れると思って。欲しかったんですよね。最初、縄文土器が。それで自分で作るようになって…」

猪風来さんに弟子入りし修行に励むこと15年。今ではオリジナルの縄文アートが作れるほどの腕前に。

(指導員 土田哲也さん)
「植物の蔓の巻き方とか葉っぱの形とか、そういったものを全部縄文土器に取り入れて…」

自然に寄りながら生きてきた縄文人の精神性を、自分なりに解釈し表現しているのだといいます。参加者も、ワークショップを通じて、縄文人が我々とは違う価値観を持っていたことに気づき、心を動かされたようです。

(参加者)
「火焔土器って煮炊きとかに使うものなのにあんなに複雑にする意味が分からないと思っていたんですけれども、現物を見ると絶対にあの形を表現しないといけないんだという必然性みたいなものを感じられて…」
「豚肉だったら豚を育ててくれた人のことを考えていて、豚にありがとうとか豚を生んでくれた大地にありがとうまでは、あまり考えてなかったのでそれを考えられる縄文人の心はとてもいいと思いました」

核心をついた参加者の反応に猪風来さんも驚きを隠せません。

(猪風来さん)
「やはり縄文の心の神髄にですね。初めての人もストレートに心を開いてストンとそこへ入っていける。大変感動しますね」

こうして出来上がった土器・土偶は10月の「縄文野焼き祭り」で焼き上げ、完成させるということです。

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