“63歳の中学1年生”に密着 夜間中学で仲間と学ぶ喜び感じて 辛い中学経験乗り越え決意 (鳥取市)

2024年4月に、県立としては中国5県で初めてとなる夜間中学が鳥取市に開校しました。夜間中学とは、病気などさまざまな理由で十分に教育を受けられなかった人たちが通います。新入生としてこの春入学した63歳の中学1年生の学校生活に密着しました。

鳥取市にある夜間中学・鳥取県立まなびの森学園。授業が始まるのは、夜のはじめ頃です。生徒の一人、田中ひとみさん。63歳の中学1年生です。

Q授業楽しいですか?
田中ひとみさん:
楽しいですよ~。

和気あいあいと50年ぶりに中学校生活を楽しむ田中さん。なぜいま夜間中学に入学したのでしょうか。

日中は鳥取市内で美容院を経営する田中さん。30年近く地元で愛されている店です。

常連客:
前から元気のよかった人だけど、前より生き生きしとんさるような気がします。

田中ひとみさん:
充実してます。人生2回楽しんでいます。

田中さんは1961年に、4人兄姉の末っ子として鳥取市で生まれました。しかし、幼い時に母親を亡くし、転校を繰り返す中でいじめにあい、不登校に。中学校にはほとんど通いませんでした。

田中ひとみさん:
休むことに罪悪感を感じてました、中学の記憶がさっぱりないんです。もうきっと記憶から排除されてます。

中学を卒業後、美容師の道に。東京で働いたのち、鳥取市内にお店をオープン。結婚して3人の子どもに恵まれ、忙しい日々を送る中でも心の中にひっかかることがありました。

田中ひとみさん:
自分がいじめられていたとか、勉強がわからないとか、こどもにも言ってなかった気がします。そのころから一緒に勉強してたらね…。

こうした中、鳥取県に夜間中学ができるのを知り、入学を決意。2024年4月の開校と同時に入学しました。

田中ひとみさん:
入学証明書が来るまでずっと不安でした。(入学が決まって)私でもいいのかな~って思いました。

「まなびの森学園」は、不登校や病気などで十分な教育が受けられないまま中学を卒業したり、小中学校で卒業そのものができなかった人たちが通う「夜間中学」です。国は、すべての人に義務教育の機会を確保するため、2017年に教育機会確保法を制定し、夜間中学の設置を地方公共団体に義務付けました。
「まなびの森学園」は、県立としては中国5県で初めての夜間中学で、今年度は10代から60代までの12人が入学しました。年齢や国籍は様々です。

鳥取県では、2020年の国勢調査で、最終学歴が小学校までの人が、県内で5000人余りいることもあり設置を検討。

まなびの森学園・山口京子校長:
最初は年齢も違うので、それぞれが緊張しながら過ごしていたが、今はお互い声かけあったりという姿も見られるようになった。

この日の国語の授業。自分の好きなものを文章にして、プレゼンする課題で、田中さんは初めての発表に挑戦しました。教室では笑いが絶えません。

まなびの森学園・山口京子校長:
(田中さんは)常に温かい笑顔で、一緒に学ぶ仲間に接してくれている姿というのが、まわりの生徒も安心することに繋がっているのかなと。そういう雰囲気をだしてくれる。

授業は月曜から金曜日、夕方から1日4時間。教わる科目は9教科で、体育や美術もあり、普通の中学校と変わりません。授業料、教科書代は無料で、中学校の教員免許を持った先生が授業にあたります。

田中ひとみさん:
歳は学校に行ったら関係ない。ひとりでも多くの友達を作って、支えて一緒に切磋琢磨。頑張ってますけどね…。

山口京子校長:
一緒に学ぶ仲間同士が、学びあい繋がりあい、共に成長しあえる、みんなが元気になれるような学校になればと思う。

そして午後9時前、この日の授業を終えました。

Qきょうの授業どうだった?
田中ひとみさん:
暑かったけど楽しかったです。支えながら、支えてもらいながら頑張っていきたいと思います。

「学び直しの場」…夜間中学。田中さんは、人一倍学ぶ喜びを感じながら学校生活を送っています。

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