パナソニック コネクト一部新卒の初任給引き上げ 優秀なエンジニア確保へ 年功序列撤廃への制度変革がカギ

パナソニック コネクトは2025年春から、一部の新卒社員を対象に初任給を引き上げる。内定者に給与の上乗せの条件などを明示することで、優秀なエンジニア人材の確保につなげる考えだ。

優秀なエンジニア人材の確保目指す

パナソニックホールディングス傘下のパナソニック コネクトは、2025年春から一部の新卒社員を対象に初任給を引き上げる。

対象となるのはインターンシップで成果を上げたり、IT系の国家資格を取得した新卒社員や、学生時代に起業経験のある新卒社員などで、上乗せ幅は月収ベースで1割から2割程度になる見通し。本格導入は翌年2026年の春から予定していて、新卒社員の1割から2割の限られた人数を対象とする。内定者に給与の上乗せの条件などを明示することで、優秀なエンジニア人材の確保につなげる考えだ。

「ジョブ型」給与設定を実行できるか

「Live News α」では、働き方に関する調査・研究を行っているオルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
横並びの初任給の見直し、どうご覧になりますか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
年齢に関係なく、職務に応じて給与を設定するいわゆる「ジョブ型」になるということです。この時にポイントになるのは、どこを基準に給与を設定するかということになります。

社内の今までの制度や等級などをもとに決めると、結局、人材の採用でライバルになる外資系ITや、給与の高いメガベンチャーなどには勝てないので、優秀な人材の採用につながらないわけですよね。

優秀なエンジニアであれば、新卒であっても1000万円クラスの給与で採用されることは珍しくなくなっているので、こういう学生を採用したいのであれば社内の給与テーブルを無視することが必要です。

優秀な人を採用したいのであれば、大胆に今までの社内の給与テーブルを度外視して、給与設定できるかどうか。社内の給与構成がいびつな構造になったとしても、実行できるかどうかは非常に重要だと思います。

堤キャスター:
同期入社の横並び、さらには年功序列型の働き方は変わっていくのでしょうか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
いま日本の大企業の多くがぶつかっているのは「年功序列型給与」をいかに撤廃していくか。これは、この数十年ずっと解決できていない問題。

例えば、10年以上前には「実力主義」「成果主義」を取り入れて、成果を上げた人の給与を上げ、そうではない人の給与を下げるなど多くの会社が模索したが、結局、法律の問題、労働組合との交渉、また特定の人たちが損を被ってしまうということから、大胆に成果主義に移行できている会社はほぼありません。

この試みは今も続いていて、ここ数年は「ジョブ型」を導入することで是正しようとしている会社が多いです。

不利になり得る制度の導入に注視

堤キャスター:
その「ジョブ型」を根付かせるためのポイントは。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
本当に「職務」に合わせたジョブ型に完全移行した場合、間違いなく損をする人は出てくるわけです。そして、その損をする人は現在の管理職や、その一歩手前の人である可能性が高いんです。

具体的に言えば、5~10名のチームをマネジメントするという職務ができた際に、30代でも、50代でも同じ給与になるわけです。

本当に年功序列給与を変えるのであれば、管理職やその一歩手前の人たちが、自分たちに不利になるかもしれない制度を導入するということを決定できるか、断行できるかどうかが本当に重要なんじゃないかなと思います。

堤キャスター:
賃金は人に対してではなく、仕事への対価です。即戦力となり得る人材の確保は大切なことですが、給与に関しては多角的な見方で評価を決めていく必要もあるように思います。
(「Live News α」6月24日放送分より)

© FNNプライムオンライン