【浦和×鹿島戦】攻撃的サッカーを目指す浦和レッズが抱える「欠陥」(1)鹿島・鈴木優磨の先制点を生んだ浦和SB「ポジション」と渡邊凌磨「適正」

現在2位と好調の鹿島を引っ張るエースの鈴木優磨。浦和戦では2得点を挙げた。撮影/原壮史(Sony α1使用)

明治安田J1リーグ第19節、浦和レッズ(以後、浦和)対鹿島アントラーズ(以後、鹿島)戦が行なわれた。試合は前半に鹿島が2点を挙げ、後半になって浦和も2点を返して2-2のスコアレスドローに終わった。

失点を重ねる浦和の「問題点」

この試合を通して見れば、失点を重ねる浦和の問題点がよくわかる。結論から言えば、リスクマネージメントの希薄さだと言える。ペア・マティアス・ヘグモ監督の指示なのかもしれないが、攻撃的な戦術を採用しているとしても、最低限のリスクマネージメントは選手に伝えるべきだろう。どんなに有望な選手が入ってきても、今の守備のやり方ならば、失点は避けられない。先に相手に得点を入れられて、そこから追いかけるゲームばかりだと、なかなか順位も上がっていけない。

まず、この試合のメンバーを見てみよう。浦和は、前節のセレッソ大阪戦からスタメンを2人変更してきた。移籍が噂されるアレクサンダー・ショルツが、出場停止を明けて起用される。また、負傷離脱していたオラ・ソルバッケンがスタメンに復帰する。一方の鹿島は、前節のアルビレックス新潟戦からスタメン11人は代わっていない。
では、得点場面を中心に試合を解説していこう。試合開始3分に鹿島のワントップ鈴木優磨が先制点を決める。右シャドーストライカーの師岡柊生が、ペナルティエリア手前から右足で放ったシュートがゴールキーパー(以後、GK)西川周作にセーブされるが、こぼれ球に反応した鈴木がペナルティエリア左からゴール決める。

鹿島に狙われた「空いたスペース」

この場面の問題は、師岡にボールが渡されたときの左サイドバック(以後、SB)の渡邊凌磨のポジショニングである。鈴木にボールが戻された際に、鹿島陣内に浦和の選手が9人いた。右SBの石原広教が、鹿島の最終ラインまで上がってタッチライン近くに立っている。相当に高い位置どりをしている。
逆サイドの左SBの渡邊も、鹿島陣内のセンターサークル先端を越えて上がっている。まず、右SBの石原が鹿島陣内深くにポジショニングしているのに、渡邊も同様に鹿島のセンターサークル先端を越えてポジショニングする必要があるのかどうか。ここがポイントの一つ目である。

鈴木からトップ下の名古新太郎にボールが渡される前に、師岡が前線に走り出していく。右センターバック(以後、CB)のショルツは鈴木についている。ショルツのカバーにはマリウス・ホイブラーテンが入る。CBのうち1人がマークしたら、もう1人はそのカバーに入るので、この守備位置は理にかなっている。
師岡にボールが渡ったのを見て、ホイブラーテンが追いかけていく。師岡の後ろを遅れながら追順する渡邊がいる。二つ目のポイントは、渡邊はSBの守備の動きができていないことである。渡邊にとっては、ウイングやトップ下が彼の適正ポジションである。本来SB専門のプレーヤーならば、もっと中に絞ったポジショニングをしないとならない。ボールサイド側のSBが高い位置をとって上がっていたら、逆サイドのSBは絞り気味にポジションを取らなければならない。

なぜなら、ショルツが鈴木をマークしていれば、そのサポートにホイブラーテンが入ることがわかるので、CBとSBの距離が開いて、そのスペースを相手が使ってくることが予測できるから、もっと中寄りにポジショニングしてリスク管理をしなければならない。
おそらく、鹿島は試合前の分析で、浦和は同時に両SBが高い位置を取ろうとするので、CBとSBの空いたスペースに走り込むように指示があったと思われる。だから、名古は躊躇せずに走り込む師岡にパスを出せたのである。
続いては、42分の追加点の場面を分析していこう。

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