アングル:欧米大手行、クレディS退場でスイス市場食い込み狙う

Oliver Hirt Noele Illien

[チューリヒ 24日 ロイター] - クレディ・スイスがUBSによる救済合併で銀行業界から姿を消したスイスでは、欧米の大手行が事業拡大の好機とみて人員拡充や、同国経済を支える中小企業の取引先新規獲得に動きつつある。

フランスのBNPパリバ、ドイツ銀行、米シティ、バンク・オブ・アメリカなどがそうした大手勢だ。

BNPパリバのスイス事業を統括するエナ・パリセ氏は「1人のプレーヤー(クレディ・スイス)が吸収されていなくなり、椅子取りゲームが再開してさまざまなチャンスが生まれている。時と場合によってはその運が巡ってくる」と語った。

クレディ・スイスはこれまで、UBSと並んでスイスの産業界から長らく取引相手銀行として当然の存在とみなされてきた。

シティのスイス商業銀行部門責任者を務めるヨルク・ホビ氏は、そのクレディ・スイスがいなくなってすぐに、幾つかのスイス企業がシティを含めた外銀との商談に乗り出したと明かす。

ホビ氏によると、2022年9月に中小企業向けの国際金融サービスを開始したシティは、一つだけの銀行に頼り過ぎることや、融資資金の不足を巡る懸念が追い風になっており、現在8人で回しているスイスの商業銀行部門の規模を28年までに倍に膨らませるつもりだという。

スイスの中小製造業事業者団体のニコラ・テッタマンティ代表は、外銀の参入を歓迎。「競争の促進役として、市場にプレーヤーが増えるのはとても心地が良い。それは(企業側にとって)サービスと取引価格の改善につながる」と述べた。

その上で外銀はまず大手企業に重点を置くだろうが、彼らが事業基盤を固めた後は中小企業も最終的に恩恵を受けられるとの見方を示した。

<UBSの壁>

ドイツ銀行でドイツとスイス、オーストリア地域を統括するベロニク・フォザー氏は、スイス法人金融部門の現在の人員は50人で、昨年初めから10%増えたと説明する。

クレディ・スイスの退場でドイツ銀はスイスで事業を拡大できると確信し、少なくとも年間5億スイスフラン(5億6000万ドル)の収入を見込んでおり、これまでに新規事業獲得と既存顧客との間の取引拡大の両方に成功して22年から23年の間で収入が2倍に増えたという。

ただそうした外銀勢の前に立ちはだかるのがUBSだ。同行のスイス市場における強さはなお圧倒的であり、スイス連邦競争委員会(COMCO)は、法人金融の分野ではクレディ・スイスを統合したUBSの「完全な代役」は全く存在せず、関係当局に「有効な競争」を促進するよう促している。

バンク・オブ・アメリカのスイス法人金融責任者を務めるブルーク・ワッチェル氏は「スイス企業は新たな取引銀行を探しているところで、向こう12カ月から18カ月以内にはこのギャップは埋まってしまうだろう」と語り、外銀にとってチャンスの窓は次第に閉じられつつあるとも指摘した。

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