「私がベッドで朝まで寝たの、いつが最後だっけ…」長男の夜泣きがひどく眠れない日々。悩みに孤独感も【「よなきごや」著者インタビュー】

「よなきごや」の連載のきっかけとなった、かねもとさんがTwitter(現、X)にアップした3ページのまんがより。(画像提供/マイナビ子育て)

子育て中のママはもちろん、学生やシニアまで幅広い世代に読まれ、共感されているまんが「よなきごや」。著者のかねもとさんも、第1子・長男の夜泣きでへとへとになる暮らしが2年近く続いたと言います。
かねもとさんが夜泣きにほんろうされた日々のことを聞きました。全2回のインタビューの1回目です。

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息子は頭が大きくて、緊急帝王切開で出産。第2子の長女も帝王切開で

「よなきごや」第1話「私が親なら」より。(画像提供/マイナビ子育て)

かねもとさんが描いたまんが「よなきごや」とは、赤ちゃんの夜泣きに悩まされ疲れ果てた人の前に、いつの間にか現れる店。赤ちゃんグッズはなんでもそろっているし、ママのためのお茶や軽食も用意されています。壁は完全防音だから、赤ちゃんがどんなに泣いても周囲に気を使わなくて大丈夫・・・。そんな不思議な店に集まる人々の物語です。

――かねもとさんは小学校6年生の男の子と、2年生の女の子のママでもあります。2人とも帝王切開での出産だったそうですね。

かねもとさん(以下敬称略) 上の子は自然分娩の予定でしたが、緊急帝王切開になりました。陣痛が始まってからも子宮口がなかなか開かなくて、6時間くらい頑張った末に、「もう無理です~~!」と私がギブアップ。私の骨盤のサイズに対して息子の頭が大きかったようで、母子健康手帳には「児頭骨盤不均衡(じとうこつばんふきんこう)」って書いてありました。
でも、体重は3000gにちょっとたりないくらいで、すごく大きい赤ちゃんではなかったです。あ、でも頭は大きかったかも。

下の子は34週の夜中に破水しちゃって、救急対応ができる大きな病院に救急車で運ばれ、緊急帝王切開で出産。体重が2500g未満だったので、NICUに入りました。小さいこと以外は問題ないと言われたんですけど、上の子のときと比べたら明らかにちっちゃくて、「大丈夫なのかな」って心配になりました。
でも2人目だったおかげで、「なんとかなるだろう」って気持ちもあったんですよね。実際、娘はトラブルもなくすくすく育ち、今ではクラスの中で大きいほうです。

息子の夜泣きにつき合っていた期間は、私の人生で最高に眠っていない期間

「よなきごや」第3話「眠れない毎日が続く・・・」より。(画像提供/マイナビ子育て)

――長男の夜泣きに苦労したとか。

かねもと 産院を退院して自宅に帰って来た日からとにかく寝ない子で、ベッドに置くと泣く、というのを繰り返していました。まだ男性が簡単に育休を取るような時代じゃなかったので、昼も夜も基本的には私がお世話をするしかなくて。深夜、寝ない息子を抱っこして、ひたすら部屋の中をうろうろし続けたんです。

息子と私だけポツンと取り残されたような気持ちになり、すごく、すごく孤独でした。部屋の暗さとか、シーンとした室内の感じとか、今でもありありと思い出せます。静かな室内で息子を泣かせちゃいけないと、とっても緊張していた日々だったことを覚えています。

――深夜にずっと息子さんを抱っこしていたんですか。

かねもと 1人目の育児はわからないことだらけ。起きている赤ちゃんを、ベッドに1人で寝かせていいものなのかわからず、眠るまで抱っこしてなきゃいけないと思っていたんです。
昼は昼でベッドに寝かせていると、「うう」とか「ああ」とか声を出しているから、相手をしなくちゃいけないのかなって思って、また抱っこ。昼寝もほとんどしない子だったので、「私はいつ寝ればいいんですか?」って感じでした。すきがあれば寝るようにしていましたけど、本当に、あれほど睡眠時間が短い時期は、私のこれまでの人生でなかったです。

――「よなきごや」の中で夜泣きに疲れ果てたママが、好きなバンドの曲を聞いてものれないし、ごはんがおいしく感じられない、という話がありました。当時のかねもとさんはどうでしたか。

かねもと 私はまんがやゲームが大好きなんですけど、上の子の産後はまんがを読みたい、ゲームをしたいっていう気持ちはゼロででした。友だちと飲みに行くのも大好きだったはずなのに、そんな時間があったら寝たいって思ってました。
まんがを読みたいっていう気持ちがやっと出てきたのは、息子を出産して2年くらいたってから。睡眠不足だけじゃなくて、初めての育児のプレッシャーも原因だったんだろうなと思います。

――長男の夜泣きにつき合いながら、どんなことを考えていましたか。

かねもと 同じ時期に産院に入院していたママたちも、同じように赤ちゃんを抱っこしてうろうろしているのかな、眠くてふらふらなのに赤ちゃんが起きているから寝られないママもいるんだろうなって考えていました。

当時はまんが家になるのをあきらめていて、まんがを描いていなかったんですが、あとから思い起こすと、「よなきごや」が私の中で産声(うぶごえ)を上げたのは、このころなのかなと思います。

――かねもとさんがひと晩ゆっくり眠れるようになったのは、長男がいくつくらいになってからですか。

かねもと 寝かしつけに母乳を飲ませなくなったころだから、1~2歳だったと思います。その後も夜中に寝ぼけて泣くことはありましたけど、一晩中寝なくて困る、みたいなことはなくなりました。でも夜まとまって寝るようになったら、朝5時に起きるようになっちゃって。私にとっては相当早い時間なので、それはそれで大変でした。

勝手に寝てくれる下の子を見て、「赤ちゃんって抱っこしなくても寝るんだ!!」と

「よなきごや」第1話「私が親なら」より。(画像提供/マイナビ子育て)

――第2子の長女はほとんど夜泣きをしなかったそうですね。

かねもと 夜中に起きて泣くことはありましたけど、おっぱいを飲ませてげっぷをさせて、ベッドに置いておくと、勝手に寝てくれちゃう!びっくりするくらいラクでした。

上の子のときは、寝かしつけている間はほかに何もできなかったけれど、下の子はバウンサーに寝かせて足でゆらゆら揺らしながら、ごはんを食べたり仕事をしたりしてました。それですやすや寝てくれたんですよね~。

――第2子は乳児期以降もすぐに寝てくれる子でしたか。

かねもと 私も一緒にふとんに入って「おやすみ」って言えば、とくに何もしなくても寝てくれました。まわりが寝るとつられて寝ちゃうみたい。おにいちゃんの寝息が一番効果的だったかな。

――2人の子の夜泣きにすごく違いがあったのは、息子さんと娘さんの性質の違いでしょうか。

かねもと うーん、どうでしょうね。たしかに下の子のほうがおとなしいタイプですけど、子どもの性質の違いより、1人目と2人目の違い、私の経験値の違いが大きいかなと思います。

下の子が生まれたとき上の子は4歳で、まだ何かと手がかかる時期。しかも下の子が生まれて寂しい思いをしないように、上の子のことを優先していたので、下の子は泣いたら相手する、くらいのかまい方をしていました。でも、それが逆によかったのか、泣かずに寝てしまうことが多かったです。

そんな下の子を見ていて、赤ちゃんってずっと抱っこしていなくても寝てくれるんだ。私も一緒に寝れば自然と寝ちゃうんだって気づいたんですよね。ママが一生懸命になりすぎると、かえって赤ちゃんは寝てくれないのかも。あくまでも私の経験則ですが。

――まんがの中で、児童館ではすごくきれいにしているママが、「よなきごや」ではすっぴんで髪はぼさぼさ、洋服もヨレヨレ、といった話がありました。

かねもと 産院入院中はみんなすっぴんでボロボロだったのに、児童館で会ったらすごくおしゃれで、きちんとしているんですよね。児童館は子どもファーストなので、ママがくつろげる場所じゃないなあと感じていました。ママがゆっくり休めることをメインにしつつ、子どもも楽しめる場所があったらいいなあって思ったのも、「よなきごや」を描くきっかけの一つでした。

「よなきごや」を読んで、「子育ては大変だねえ」とつぶやく小6の長男

「よなきごや」第4話「ママがいちばん?」より。(画像提供/マイナビ子育て)

――2人の子どもたちは、かねもとさんのまんがを読んでいますか。

かねもと 実は、私が「かねもと」という名前でまんがを描いていることを、ちゃんと話してはいないんです。といっても、上の子はもう、うすうすわかっているようですが。
うちの本棚に普通に置いてあるので、下の子もまんがは読んでいて、「お母さんの描く絵に似てるね~」って。「そうだね」って答えてますけど、ほぼバレバレだと思います。

――お母さんが描いたまんがだと理解して読んでいる息子さんの感想は?

かねもと 小6男子が興味を持つようなテーマじゃないと思うんですけど、「よなきごや」を結構真剣に読んでいて、読み終わると「子育ては大変だねえ」って。だれのせいで大変だったんだ!って突っ込みたくなりましたが、息子なりに感じることはあるみたいです。

息子が頻繁に夜泣きをしていたころは、これが一生続くんじゃないかとか、こんなに寝なくてこの子の脳は大丈夫なのかとか、すごくネガティブになっていました。でも、いつの間にかひと晩通して寝てくれるようになったし、息子の脳に異常は見当たらず、ちゃんと大きくなっています。

夜泣きはいつかきっと終わるけれど、つらいときは我慢しないで、パパやまわりの人に助けてもらってほしいです。そして、夜泣きでボロボロになっている仲間はまわりにたくさんいるってことを思い出すと、ちょっとだけラクになるかなと思います。

お話/かねもとさん 画像提供/マイナビ子育て 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

かねもとさんの子育てでの夜泣き経験がベースになって生まれた、まんが「よなきごや」。子どもの夜泣きがつらいとき、ちょっとしたすき間時間があったら読んでみてください。ほっと一息つけるかもしれません。

かねもとさん

PROFILE
東北在住の2児の母。著書にNHK総合テレビ「よるドラ」でドラマ化された『伝説のお母さん』のほか、『伝説のお母さん つづきから』『私の息子が異世界転生したっぽい』(以上、KADOKAWA)、原作担当書に『私の息子が異世界転生したっぽいフルver.』(小学館)など。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年6月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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