「焼き魚」のイメージ覆るかも 白老町でホッケの「陸上養殖」実証実験始まる 江別では温泉水でフグ

ホッケといえば焼き魚が定番ですが、その常識を覆すかもしれません。25日、北海道の白老町で「陸上養殖」の実証実験が始まりました。

きつね色の香ばしい皮に、脂がのったホクホクの身が美味しいホッケ。このように焼いて食べるのが一般的ですが…

坂詰怜記者)

「珍しいホッケの刺身をいただきます。淡泊な白身魚ですね。あぶらが乗っているんですが、くどくなくてとてもおいしいです」。

こちらの函館市内の飲食店では、新鮮なホッケを生で食べることができます。刺身だけでなく寿司にマリネも。普段スーパーなどでは見ることができない生食用のホッケ。店で提供するにも苦労が絶えません。

根ぼっけ・福留誠代表)

「ホッケだけではないんだけど、天然のものは捕食している関係でアニサキスが入るんです。気を使いますよ、(アニサキスが)通ったところもだめだから、そういうのは生から外すわけだから。1匹全部だめになることもあるんですよ」。

「これアニサキスです」アニサキスは寄生虫の一種です。寄生した魚介類が死亡して時間が経過すると、内臓から筋肉に移動することが知られています。これを人間が食べてしまうとアニサキスが胃や腸の壁に入り込み、激しい痛みを伴う食中毒の原因となります。

生で提供するにはひと手間もふた手間もかかるホッケ。水産庁によりますとホッケ漁が盛んな北海道北部やオホーツク沿岸の漁獲量は1998年におよそ20万トンありました。そこから激減し2015年にはおよそ1.6万トン。近年は少し増加に転じてはいるものの、2022年はおよそ3万トンでした。

そんな厳しいホッケ事情に光明が差すかもしれません。

25日、北海道の白老町で道内初となるホッケの「陸上養殖」の実証実験がスタートしました。白老町ではこれまで主力だったスケトウダラなどの漁獲量が減少していて、新たな漁業を確立しようとホッケの養殖に乗り出しました。建物の中で水槽の水を循環させているため、寄生虫がホッケの体内に入り込む可能性を抑えることができます。実証実験の期間は3年間です。

海と漁業を科学するプロジェクト 川下 正己さん)

「この魚を養殖して、寄生虫とかの心配のない美味しい刺身の魚として、脂ののったホッケを観光客の方にも是非召し上がってもらって、北海道の来る足をもう一つ増やしたい」。

いまは職人技を駆使して、やっと食べることができる生のホッケ。近い将来、私たちの身近な存在になるかもしれません。

そして、「陸上養殖」はこんなところにもーー

加藤諒也記者)

「介護施設が立ち並ぶ場所に突然現れたビニールハウス。なんとここでフグが育てられているんです」。

江別市内にある介護施設や就労支援の事業所などが集まるエリア。この一角にあるビニールハウスの中で養殖されているのは、なんと「トラフグ」です。驚きの方法で育てられていました。

担当ココルクえべつ フグ養殖場・木村正雄飼育員)

「100%温泉水で育てています。温泉ですのでミネラル分多いので少し成長がはやいです」。

3年ほどで出荷できる大きさまで育つというトラフグ。敷地内のレストランで温泉水で育てたトラフグの刺身、「てっさ」などを楽しめます。海の異変が叫ばれる中、「陸上養殖」によって漁業の可能性が広がっています。

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