激動の大型コラボ「にじさんじGTA」を振り返る “事件”と共に紐解くその魅力

VTuberグループ・にじさんじが、6月15日から25日にかけて大型コラボ企画「にじさんじGTA(にじGTA)」を開催した。

期間中は、ゲーム『Grand Theft Auto V(GTA5)に有志が制作した「FiveM」という改造データ(MOD)を導入した特設サーバーが開設。ライバー達がサーバーにアクセスし、同じ世界の中で生活を送った。

企画を主催したのは、にじさんじに所属する叶さん、星川サラさん。同じく『GTA5』を使った人気企画「ストグラ」の運営チームが協力しており、システムも一部輸入されている。

今回は「にじGTA」の魅力を解説しながら、大きなムーブメントを起こした「ギャング」や「半グレ」を中心に振り返っていこうと思う。

「にじさんじGTA」の特徴

にじさんじではこれまで『Minecraft』『ARK: Survival Evolved』『RUST』といったゲームで大型コラボ企画が行われてきた。

今回の「にじGTA」では、日本のみならず、韓国やインドネシア、欧米のライバーも含め、計110人以上が参加

多数のライバーが世界中から集まったため、道端でたまたま友達を見かけたときの喜びもひとしお。ゲーム中で対面できたことを喜ぶ姿もよく見られた。

「ストグラ」や「VCR GTA」といった他の『GTA5』を使ったイベントには、「FiveM」の仕様に慣れた手練れの参加者が多く参加している。一方で、今回の「にじGTA」は初心者の割合が高かったことも特徴の1つだった。

そのため、互いに操作方法などを教えあったり、期間中に得た知識を交換したりすることで新たな交流が生まれていた。

運営が前日のトピックを振り返るニュース動画も魅力

今回のような大型企画では、多数のライバーが参加しているため、全ての配信を追いきることは現実的ではない。

公式やファンメイドの切り抜き動画でも、一度に多数のトピックスは扱われないため、全ての情報を追いきるのは難しい。

しかし「にじGTA」では、星川サラさんのチャンネルで毎日「にじGTAニュース」と題したまとめ配信を実施。運営上の変更点や、前日起きた事件などをここで確認することができた。

また、主催の2人は期間中、街を巡りながら参加者のサポートしていた。

そのため、2人の配信を見ることで広くサーバーの様子を知ることができたのも今回の特徴だろう。

職業ロールプレが生み出すドラマの数々

「FiveM」を使った『GTA5』のサーバーでは、プレイヤーが警察官や飲食業、車を扱うメカニックなどの職業に就くことができる。

「にじGTA」では、ルールとして参加者たちにその職業らしく振る舞う(ロールプレイを行う)ことが求められた。

犯罪を行わない人は「白市民」、基本的には白市民でありながら、時に犯罪に参加する人は「半グレ」、犯罪を生業にする人は「黒市民(ギャング)」と呼称。

警察官や救急隊といった公務員、メカニックはギャングと兼任できないため、白市民が犯罪に手を染めてしまうのかといった選択もドラマを生んだ。

一方ギャングについては、最初から黒市民として生きていくことを決めていた参加者も存在。

そのため、初期の段階で組織として結束したり、様子をうかがいながら勧誘を行い、徐々にチームが大きくなっていく様子が見られた。

「詳しくない」からこその面白さ

前述のとおり、初心者が多かったことは「にじGTA」の特徴の1つだ。

山神カルタさんの配信には、それを象徴するような面白さがあった。

サーバーに入って早々に銃を欲しがった山神カルタさんは、購入のためにガンライセンスが必要なことを知ると「え? ここって無法地帯じゃないの?」と言い放つ。

前提として、『GTA5』自体は山神カルタさんが言う通り、犯罪が中心の無法地帯のようなゲームだ。一方で、「ストグラ」などの企画では、参加者の協力のもと、秩序をもって町が運営されてきた。

近年の「FiveM」を使った企画の文脈を知らないが故の発言だろう。

周央サンゴとレオス・パン屋を巡るサスペンスのようなドラマ

その後、山神カルタさんは山で「ハッピーフラワー」という花を採取する。この花を巡って「にじGTA」では度々面白いドラマが生まれた。

「ハッピーフラワー」は、実はドラッグの材料になるアイテム。精製して売人に売りさばくと、警察に捕まる恐れもあるが大金を手にすることができる。

しかし、その名前から、ドラッグの素材だと知らないライバーが採取してしまうことも。

例えば、パン屋に勤める周央サンゴさんは、仲間たちのサポートのもと、犯罪などには関わらず、平和に暮らしていた。

しかしある日、ひょんなことから花が生える山に来てしまい、何も知らずに「ハッピーフラワー」を摘もうとしてしまう。

突然の出来事にパン屋の店長であるレオス・ヴィンセントさんは動揺するのだが、実はこの時、彼はパン屋の資金繰りのため裏でドラッグの密売に手を染めており……。

仲間にいい暮らしをさせたいと奔走するレオス・ヴィンセントさん、町の裏の側面を知らないながらも何かを察していく周央サンゴさん、そして2人を見守る仲間たち。さながらサスペンスドラマのような物語が繰り広げられた。

たまたま摘んだ花が運命を決めた来栖夏芽

来栖夏芽さんもまた、コメントからツッコミを受けながらもドラッグの材料だと知らず「ハッピーフラワー」を採取。

「これどこかで売れないかな?」とギャングの竜胆尊さんに相談すると、薬物カルテル・enigmaのメンバーである狂蘭メロコさんを紹介される。

来栖夏芽さんと狂蘭メロコさんとの初めての会話は、ドラッグの原料の売買の話から始まった

その後来栖夏芽さんは、ゲーム内で銃刀法違反、車両窃盗と犯罪に手を染め、道を踏み外してしまうこととなった。

このように無知さが新たな出会いや物語につながるケースがあり、面白さを生んでいる

裏切者は絶対に許さない、圧の高さで魅せる樋口楓

「にじGTA」では、犯罪に関わらないはずの白市民の行動が「まるでギャングのよう」だと取り上げられることもあった。

特に樋口楓さんは、周囲への圧のかけ方が怖いと話題になることがあるのだが、「にじGTA」でもその圧は健在だった。

ある時、救急隊の医局長をつとめる樋口楓さんの車に他の車が激突してしまう。相手の車から「やべっ」と声が聞こえた途端、樋口楓さんは「今の誰?」と追跡を開始。

最終的に、追突してきたのがメカニックの伊波ライさんだったということもあり、車を修理してもらって気が収まったようだった。

卯月コウ、衝撃の脱獄劇

白市民の中には、公務員からリタイアし、そのままギャングになってしまう参加者も。

警察ではレヴィ・エリファさん、卯月コウさん、鷹宮リオンさん、五十嵐梨花さんらが退職し、ギャングや半グレになっている。

その中で、序盤に脚光を浴びたのが卯月コウさんだった。

卯月コウさんは、警官でありながらギャングに入り、汚職に手を染めた末、警察にいられなくなり、ギャングに身を寄せる。

事件が起きたのは、そうして犯罪と逃走、逮捕を繰り返していた時。取り押さえられ聴取を受けていた卯月コウさんは、全てを失う代わりに病院に移動する「リスポーン」を使い脱獄。

流石に本人も裏技じみた脱獄を反省したのか「まずいことをしたかもしれない」と主催の叶さんに報告する。

叶さんは大爆笑しながら「いいよ! それぐらいやったっていい! けど、もうやめてね」といいつつ、卯月コウさんを「この街で一番悪い奴」と評した。

ただ、最終日では北小路ヒスイさん、ローレン・イロアスさんらと結束し、主催2人に向けてサプライズで花火をあげ、参加ライバーが一斉にSNSに感謝のメッセージを投稿するイベントの首謀者になっており、感動の一幕もあった。

警察トップのローレンとエビオの辞職騒動

期間の終盤には、警察署長のローレン・イロアスさん、副署長のエクス・アルビオさんが辞職しギャングに転向しようとしたのも話題になった。

事の発端は、エクス・アルビオさんが日頃のねぎらいも込めてローレン・イロアスさんをキャバクラに誘ったこと。

この店はギャングの竜胆尊さんがオーナーをつとめており、会計金額は26億円と法外な値段に。最高級のスポーツカーが約3億円だったことを鑑みると、異常な請求額だと言える。

2人は当然支払えるわけもなく、会計を踏み倒し逃走。最終的に逮捕された2人は、前科がついたため警察ではいられないと辞職。闇ノシュウさんとギャング「DROPS」を結成した。

翌日には、ローレン・イロアスさんがギャング側の一大イベントである大型犯罪を行うと警察に宣戦布告

食い逃げに関してはそもそも金額が異常だったこと、幹部が抜けた結果警察の戦力が落ちてしまったことにより、警察側がこの犯罪を阻止できれば2人は復職することに。

今後の進退がかかった2人は、メカニックの社長・イブラヒムさんや薬物カルテルのリーダー・葛葉さんを誘いドリームチームを結成。石油採掘施設(オイルリグ襲撃)や銀行の地下金庫室(ユニオンヘイスト)を襲撃した。

対決の結果やその後2人がどうなったかは、実際に配信を見てみてほしい。

「にじGTA」終了後、振り返るのにおススメの配信

ここまで黒市民側を中心に「にじGTA」を振り返ってきた。

「にじGTA」は特性上、普段よりも配信時間が長い傾向にあるため、期間中は見たいけど追いきれなかったというファンも多いだろう。

イベントも終了したので、先述のニュース動画も参照しつつ、色んな視点で配信を見てみてはいかがだろうか。

個人的には叶さん、星川サラさんの運営視点での配信や、記者をつとめ、街を隅々まで駆け回った北小路ヒスイさんのアーカイブがおすすめだ。

白市民では、にじさんじ内の楽器演奏グループ「楽団V!VO」メンバーが集まったピザ屋の配信が、のんびりと見れる。

さらにその中では、メンバーのエリー・コニファーさんがピザ屋で使うヘリを手に入れるために、キャバクラで奮闘するストーリーにも注目したい。

客として来た伊波ライさんとの恋模様や、別客のましろ爻さんとの三角関係など昼ドラのような濃密な内容を楽しめる。

様々なドラマが生まれた「にじGTA」。またの開催や、にじさんじライバーがストグラをはじめ、他のサーバーに参加していくことに期待したい。

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