台風や突風に備える屋根の災害対策 新たな防災瓦や改修に自治体の補助金も【わたしの防災】

台風や大雨が増える季節を前に、屋根が飛ばされないための対策を考えます。「防災瓦」と呼ばれる新たな屋根材も普及してきています。

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静岡市駿河区の建物の改修工事の現場です。

<渡邊商店 渡邊大輔取締役>
「旧マッケンジー住宅の屋根の瓦のふき直し作業をしています」

旧マッケンジー邸。西洋瓦と白壁が目を引くスパニッシュスタイルの洋館です。84年前、マッケンジー夫妻が建てました。2023年から、2度目の大規模改修を行っています。

<渡邊商店 渡邊大輔取締役>
「今ここに瓦がふいてあるんですけど。これが昔の屋根にふかれていた瓦ですね」

塩害に強い「三州塩焼」。今は生産していない貴重な瓦です。邸宅に使われている約8000枚のうち、ひびの無い6300枚はすべて元の位置に戻します。

建築基準では、もともと、瓦屋根の周辺部分だけを固定するよう定めていましたが、2022年に改正され、瓦1枚1枚をビスや釘で止めることが義務付けられました。

<渡邊商店 渡邊大輔取締役>
「今は、防水がすごく良くなってきているので。釘穴開けても大丈夫(水漏れしない)ということで、瓦すべてにこのように釘で止めています。風速40メートル、50メートル吹いても、瓦が持ち上がりにくくなるということですよね」

<伊豆田有希記者>
「うわ、すごい。全然動かない」

近年、静岡県内でも、台風や突風の被害が相次いでいます。災害の度に、屋根瓦が飛ばされ、ブルーシートで覆われた家々がみられる状況です。

静岡県磐田市内で旅行業を営む山岡さんです。事務所を兼ねた自宅は、築50年。2023年、屋根瓦をふき替えました。元の屋根は、当時の一般的な工法で、周辺部以外は土の上に瓦を載せただけの状態でした。瓦が飛んだことは一度もありませんでしたが、台風が来るたびに、雨漏りするようになりました。

<山岡喜九雄さん>
「磐田の補助金が出るって知ったもんですから、思い切ってやろうっていうことで。うちの孫もですね、今高校2年生なんですが、平屋にして、頑丈に建ってもらったものですから、住み続けてほしいなぁと思います」

過去の台風で「近くの家から瓦が飛んできた」という苦情が複数寄せられた磐田市では、屋根の全面改修に補助金を出しています。

<磐田市建築住宅課 渥美英之課長補佐>
「地域一帯で被害があると、その後の修復工事がやはり、業者さんの数も限られてますので、なかなかすぐに復旧できない。近隣の方への例えばお宅に被害が生じたりとか、第三者被害はもちろんありますし」

磐田市によると屋根の改修にかかる費用は平均で200万円から300万円。市は最大55万円を交付しています。

<名倉ルーフ 名倉孝次社長>
「はい。(ドン)すごいでしょ」

6月、磐田市で開かれた展示会です。いまは瓦自体も防災仕様になっています。

樹脂と繊維、セメントでできています。本来の素焼きの瓦と比べると約半分の重さです。素焼きの瓦の表面に突起があり、瓦同士をしっかり固定できるものもあります。これらは「防災瓦」と呼ばれています。

いざ屋根が落下してしまうと、長期間にわたって安心して暮らすことができなくなります。

屋根が強風に耐えられるか不安な場合は、ふきかえの技能を持つ近くの業者が相談にのってくれます。

屋根瓦の全面改修を対象にした補助金は、磐田市のほか、菊川市、浜松市、藤枝市、牧之原市、袋井市、森町にもあります。(支給条件は市町によって異なる)

旧マッケンジー邸の屋根をふき直している渡邊さんは瓦について「日本の瓦は日本の風土に合っている。夏は涼しく、冬は温かく過ごせる。景観にも寄与する素晴らしい建材。残していきたい」と話していました。

瓦は重いというイメージがありますが、きちんと固定することで、何十年、何百年と家を守ってくれます。補助金も活用しながら、台風や大雨に備えましょう。

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