【6月26日付編集日記】存在感

 大蛍ゆらりゆらりと通りけり―。淡い黄緑色の光が舞うさまを見たのは何年ぶりだろう。桑折町の産ケ沢川沿いでは、小林一茶の句さながら、ホタルがゆったりした動きで目の前を横切っては進路を変え、鮮やかな光跡を描いていた

 ▼ホタルは日中、草むらに潜み夜行動する。よく見ると、目線よりかなり高い所で光っていたり、同調しているように一斉に明滅したりするときがあった。詳しい方に聞くと、草の葉などに止まっているメスを見つけやすくするためという。オス同士が協力し合いながらも、競争することになる

 ▼自民党総裁選を9月に控え、積極的に会合を重ねる首相経験者が存在感を発揮している。新たなリーダーが出てくるべきとの認識を示し、波紋を投げかけている

 ▼一方の首相は、5月使用分を最後に終了したばかりの電気・ガス料金の補助を8月に再開する考えを表明した。唐突感は否めず選挙を見据えたばらまきとの見方もある。存在感を高めるのに、あれこれ腐心しているようにも見える

 ▼政治は夜動くと言われ久しい。政局がどう展開しようともそこに至る過程が見えないのだけは勘弁してもらいたい。明るいときにきらりと光ってこそ、信頼も付いてくる。

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