【新分野進出】二本松の動きに注目(6月26日)

 二本松市内で企業の新分野への進出や新たなブランド化の動きが相次ぎ、注目を集めている。原材料価格の高騰などで厳しい経済情勢が続く中、果敢な挑戦を応援していきたい。

 油井の建設会社は、観光イチゴ園を運営する子会社が先月、イチゴのカフェをオープンさせた。冬から春の収穫期だけでなく、年間を通して味わってほしいと、約20種類の完熟イチゴ約1トンを冷凍保存し、利用している。遊休農地や農業資材を活用して2017(平成29)年から栽培し、経営の多角化と地域農業の維持に当たっており、カフェを商機と雇用の拡大につなげる。市内の菓子店と連携してイチゴスイーツを開発するなど、1社の試みは波及効果を生み、一層の広がりも期待できる。

 渋川の金属プレス加工・自動車関連部品製造の会社は、野菜の水耕栽培と魚の養殖を組み合わせた循環型農法「アクアポニックス」を導入し、サラダ菜やリーフレタスを今月から道の駅安達に出荷している。水耕栽培は、淡水魚の養殖により栄養分を含んだ水を活用している。

 本業を守りつつ新たな可能性を広げたいと、30代の専務が中心となって取り組む。二本松信用金庫が地元の金融機関ならではのきめ細かな体制で、若い世代の第二創業を支援している。

 二本松信金は、事業所のSDGs宣言書の作成支援にも昨年度から積極的に取り組み、現時点で40社を超える宣言につなげている。地球環境保護はもちろん、各事業所の専門分野や働き方をSDGsの視点から捉え直すことで、目標と誇りを持って仕事に取り組める。二本松信金には消防団在籍者も多く、今春、総務省消防庁消防団協力事業所の認定を受けている。地域への貢献と住民生活に密着した視点から地域づくりを後押しする信金の役割は大きい。

 あだたら商工会は今月、地域ブランド品「あだたら・だから」第1弾として生そばセット、熟成牛肉、果実のジャムとジュレを発表した。商工会の経営指導員が地元事業者と一体で開発、製品化した。折り紙付きの商品として広く発信する。地元企業と金融機関、経済団体が力強くスクラムを組み、地域経済の活力を生む態勢を、さらに整えていってほしい。(佐藤克也)

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