めんつゆの濃縮タイプの倍数は水の量ではない ストレートとの違いは? 選び方のコツを栄養士が解説

麺類のつゆとしてだけでなく、料理に便利な調味料めんつゆ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

暑くなってくると、そうめんやそばなどの麺類が食卓に登場する機会が増えるでしょう。そこで欠かせないのが、めんつゆです。市販のめんつゆには、ストレートと希釈する濃縮タイプがありますが、どちらを選ぶのが良いのでしょうか。日持ちやほかの料理の使い回しなどを考えると、迷うところです。めんつゆについて、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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めんつゆとは 「2倍濃縮」は2倍量の水で薄める意味ではない

めんつゆは、しょうゆや酒、みりんなどの調味料にだしが加わったものです。だしには主に、かつお節や昆布などが使われています。市販のめんつゆのタイプは、そのままつゆとして使えるストレートをはじめ、希釈して使う2倍濃縮、3倍濃縮などがあります。

誤解しやすいのですが、濃縮タイプの「倍」は、ストレートのつゆと比較した濃縮率のことです。めんつゆ量の2倍、3倍の量の水を加えて使用するという意味ではありません。たとえば、2倍濃縮のめんつゆは、つゆ:水を1:1で希釈するとストレートと同じ濃さで2倍量になります。3倍濃縮の場合は、つゆ:水を1:2の割合、同様に4倍濃縮はつゆ:水=1:3の割合で希釈すると、ストレートのつゆがその倍量できるということです。

ストレートと濃縮、どちらのタイプのめんつゆを選んだら良いか迷うこともあるかもしれません。好みの味や使い勝手の良さで選ぶのが一番ですが、それぞれの特徴を知ったうえで選んでみるのも良いでしょう。

だしの風味を選ぶならストレート

ストレートタイプと濃縮タイプでは風味が異なります。ストレートジュースと濃縮還元のジュースのようなものです。一般的にストレートタイプのほうが、濃縮タイプよりもだしの風味が豊かで価格も高めです。だしの旨味成分には、かつお節であればイノシン酸、昆布ならグルタミン酸、シイタケならグアニル酸などがあります。

濃縮タイプは、だしの風味よりも砂糖やしょうゆの味が強めに感じる特徴があります。だしの味わいにこだわりたいのであれば、ストレートタイプのめんつゆを選ぶと良いでしょう。

ほかの料理の調味料としても使うなら濃縮タイプ

めんつゆを調味料として麺以外にも使うのであれば、濃縮タイプのほうが使いやすいです。ストレートタイプは、麺のつゆとしてはそのまま使えて便利ですが、ほかの料理の調味料として使うとなると、多くの場合、ぼんやりした味になってしまいます。

濃縮タイプのめんつゆは、料理の味が決まりやすいところが便利です。たとえば、親子丼や炊き込みご飯、和風パスタ、だし巻き卵など、だしをきかせたしょうゆ味の料理に使うとおいしくできます。

また、煮浸しや煮物、きんぴら、炒め物の味つけも手軽に。めんつゆにオイルと柑橘系のユズやレモン果汁をプラスすると、さっぱりとした味わいの和風ドレッシングになります。サラダのほか、冷奴にも合いますよ。

開封後の賞味期限が長いのは?

開封前のめんつゆの賞味期限は、だいたい1年程度です。しかし、いったん開封すると、冷蔵保存でも鮮度が落ちるのが早い特徴があります。製品によって違いがありますが、「開封後はお早めに」と記載されており、ストレートタイプであれば3日以内に使い切ることが推奨されています。

2倍濃縮タイプであれば、2週間前後、3倍濃縮タイプであれば3週間程度です。これは、ストレートの方が塩分や糖分、アルコールなどの添加が少ないためです。

使い切るのが難しい場合は、冷凍保存もできます。ジッパー付きの冷凍専用の保存袋や小さめの冷凍容器などに入れて小分けにして凍らせておくと便利です。製氷皿を用いると、使いたい分だけを取り出して使えるのでいいでしょう。

和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。

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