「洞窟シダ植物群落」市文化財に指定 佐世保市教委 南方系希少種など複数

希少なシダ植物などがあるとして市の文化財に指定された「洞窟シダ植物群落」=佐世保市吉井町(佐世保市教委提供)

 佐世保市教委は、市文化財審査委員会の答申を受け、「洞窟シダ植物群落」を市文化財(天然記念物)に指定した。南方系を含む複数のシダが一カ所に集まっている点が高く評価された。
 指定されたのは吉井町の福井洞窟の植物群落。一定の照度や湿度が維持される洞窟入り口には多くのシダが自生しており、崖地や急傾斜地の岩上にしか生育できないものも多い。中には南方系のスジヒトツバやリュウキュウイタチシダなど希少な種類も多い。
 市内では福井洞窟近くの御橋観音のシダ植物群落が国の天然記念物に指定されている。審査委は福井洞窟のシダ植物群落についても、匹敵する価値があるとし「今後保護すべき洞窟のシダ植物群落の指標的役割となる」とした。
 長崎大の中西弘樹名誉教授(植物生態学)は市内の他の洞窟遺跡で見られるシダ植物群落も「市の天然記念物の価値は十分にある」と評価。市教委は今後、同様の指定を拡大したい考えで「歴史性に加え、植物の切り口からも重層的に遺跡の価値を伝えていきたい」とする。市内に36ある洞窟遺跡を「面」として捉え、遺跡の特異性を理解してもらう仕組みづくりを目指す。

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