【米兵少女暴行事件】なぜ県に連絡がなかったのか 「事件の隠ぺい、重大な問題」と識者は指摘

(解説:平良優果記者)

まず、事件発覚の経緯をみていきます。

去年12月に事件が発生、その後、県警による在宅捜査が続いたあと、今年3月に県警が米空軍の男を書類送検し検察が起訴しています。3月に検察が起訴したタイミングで外務省はエマニュエル駐日米国大使に抗議したとしています。

ーーただその後6月26日まで、起訴から3か月間、県への連絡は一切なかったんですよね

はい。また、ここまでの間、県内では1月に、普天間基地を辺野古・大浦湾に移設するための埋め立てに向け、政府の “代執行” により大浦湾側の工事準備が進みました。

5月にはエマニュエル駐日米国大使が先島(石垣島や与那国島)を訪問し自衛隊基地などを視察。6月には県議選が行われました。

4月には岸田総理の訪米もあり、県や政府、米側にとって重要な日程が続いたタイミングでもありました。

私は5月のエマニュエル大使の与那国島の視察を現場で取材したのですが、エマニュエル駐日米国大使に大使はこのとき終始にこやかに、笑顔をみせながら取材対応し、日米の安全保障上の連携強化の必要性を強調していました。

ただ、その時点で大使は未成年の少女を巻き込んだこれだけ重大な事案が沖縄で発生したことを認識していて、そのことについて一切の説明もないまま今後の日米の連携強化ばかりを強調していたわけです。

「隣国が危険だから」と、“有事” のための連携強化を訴える前にまずは繰り返される基地から派生する諸問題、県民の日頃の暮らしに与えている影響から見直す、対応するのが先だろうと、大使の行動には違和感を感じます。

ーー政府や米側の対応について識者はどう考えていますか

沖縄国際大学の前泊博盛教授は日米政府の対応について、「事件発生の危機的状況を隠蔽しひそかに処理した重大な問題」だと批判しています。

また県が事実を知らされなかった空白の3か月については、「県議選後の公表」に政治的な配慮・思惑を感じさせる、人権よりも政治、政局を優先する日米両政府の姿勢が示されていると指摘しています。

自衛隊配備や日米共同演習など県内で進む軍拡に対する県民の反発を抑える目的も
あったのではないかと話していました。

玉城知事が今回、情報共有がなかったことについて憤りを述べている一方で、外務省や県警は「被害者のプライバシーへの配慮」を報告しなかった理由にあげています。

今回の件は防衛省にも正式な連絡がなかったようで、防衛省関係者の1人は外務省の対応を「センスがない」と一喝し、「県と政府の対立が目立ったなかで何かしらの配慮があったとみられるのもしょうがない」と話していました。

もちろん被害者のプライバシーは十分に配慮されるべきものですが、過去の事案では、プライバシーに配慮して広報はされないものの検察・県警・外務省が県に情報を提供し、県も表立った発表はせずに政府と足並みをそろえて抗議や被害者のケアにあたっていた、というケースもありました。

県が言っているのはなにも「被害者のプライバシーを公表しろ」ということではありません。

米軍基地を抱える行政として、県民の安全を守る、責任ある対応を取るために必要な情報さえも与えないのはどうなのか。米軍が起こした事件の一報さえ知らされないことは基地を多く抱える沖縄にとって自らの暮らしを自らで考える事さえできないということに等しく、政府はこの状況を重く受け止めるべきです。

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