町田だけじゃない「J1、なでしこ、JFL首位チーム」シン・快進撃の舞台裏(2)昇格1年目で観客動員「浦和、神戸」超え、昇格5年目で「開幕7連勝」独走

昨年の天皇杯では、川崎フロンターレをホームに迎えた高知ユナイテッドSC。1-0で敗れたものの、健闘が光った。撮影/中地拓也

現在、J1リーグに新たな風が吹いている。初昇格したばかりのFC町田ゼルビアが、折り返し地点を迎えても首位に立っているのだ。こうしたフレッシュな話題は、他のリーグにもある。なでしこリーグのヴィアマテラス宮崎と、JFLの高知ユナイテッドSCの「シン・快進撃」の秘密を、サッカージャーナリスト後藤健生が探る。

■毎試合「1500人」を超える観客のV宮崎

こうした快進撃によって、宮崎県児湯郡新富町にある「いちご宮崎新富サッカー場」には多くの観客が集まっており、第13節の「朝日インテック・ラブリッジ名古屋」戦では、観客数はついに2045人に達した。

プロであるはずのWEリーグは、競技レベルは急速に上がっているものの、観客動員という面では苦戦を強いられている。2000人以上の観客を呼べるのは浦和やINAC神戸、新スタジアム効果のあるサンフレッチェ広島レジーナの3チームだけ。最近は3ケタ(つまり1000人以下)という試合も増えている。

そんな状況を考えれば、「2部」に当たる「なでしこリーグ」で毎試合1500人を超える観客を動員しているV宮崎は大健闘といってもいい。

実は、新富町にあるホームスタジアムは、J3リーグのテゲバジャーロ宮崎(T宮崎)のホームスタジアムでもある。

もともと、ヴィアマテラス宮崎はT宮崎から分かれる形で発足したチームだったが、両者の環境も変化し、現在、両者は協力関係にあるという。また、新富町も町長をはじめとして、町起こしの一環としてサッカーに力を入れているという。

ちなみに、J3リーグで苦戦を強いられている(現在18位)T宮崎の観客動員数は1000人前後と低迷しており、新富町では観客動員の面では女子のほうが優位にあるようだ。V宮崎の場合、選手の多くが町に住んでおり、住民とも顔見知りの関係にある影響もあるのだという。

■JFL首位の高知UとC新宿の試合を「観戦」

J3リーグより一つ下のカテゴリーが、日本フットボールリーグ(JFL)である。

Jリーグのクラブ数が60に達した昨年からは、J3リーグとJFLの間で入れ替えが行われることになった。

J3ライセンスを持ったクラブがJFLで優勝すると、J3リーグ最下位のクラブと自動入れ替え、2位に入った場合はJ3の最下位または19位のクラブと入れ替え戦を行うことになっている。

ただし、昨年はJFLの上位にJリーグ入りの意思がないHonda FCが優勝、2位にもライセンスを持っていないブリオベッカ浦安が入ったため、J3リーグとの入れ替えは行われなかった(J3最下位のギラヴァンツ北九州と19位のT宮崎は命拾いをした)。

昇格の条件は厳しいが、一昨年あたりからJFLの競技レベルも急成長中だ。かつては、関東大学リーグの強豪には敵わないような時代もあったが、今は間違いなくJFLが実質的にも4部リーグとなっている。

今シーズン、そのJFLで首位を走っているのは、高知ユナイテッドSC(高知U)だ。

なかなか高知Uの試合を観戦する機会はなかったのだが、6月22日には東京の味の素フィールド西が丘で、JFL第13節のクリアソン新宿と高知Uの試合があったので、さっそく観戦に行ってきた。

■スタートダッシュに成功した高知Uの「戦い方」

ただし、高知UはFC町田ゼルビアやヴィアマテラス宮崎と違って「昇格1年目」のチームではない。

高知Uは、2016年に同じ高知県にあった「アイゴッソ高知」と「高知UトラスターFC」が、将来のJリーグ入りを目的に統合して発足したクラブで、全県がホームタウンとなっている。2017年、18年と四国リーグを連覇したのだが、JFL昇格を争う地域チャンピオンズリーグの壁に跳ね返されていた。しかし、2019年にはついに地域CLで2位に入って、JFL昇格を果たす。

しかし、JFL昇格後は2020年に14位、21年が13位、22年が11位、そして昨年が7位と中位に定着していた。失礼ながら、全国的にはあまり注目を集めることもなかったし、経営面でも苦戦を強いられていると伝えられていた。

ところが、今シーズンのJFLでは、開幕7連勝とスタートダッシュ。第13節のC新宿戦に勝利して、現在、11勝0分2敗の勝点33という圧倒的な成績で、2位のFCティアモ枚方に勝点8という差をつけて首位を走っているのだ。

僕は、このチームも御多分に漏れず「カウンタープレス型」のチームなのかと思っていた。

だが、C新宿戦ではなかなかしたたかな戦いを見せてくれた。

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