酢に白いモヤモヤとした浮遊物が 食べても大丈夫? 栄養士が解説

料理をさっぱりと仕上げる酢(写真はイメージ)【写真:写真AC】

暑くなると、さっぱりとした味にするため、料理に酢を使う機会も多いでしょう。「酢は腐らない」と聞いたことがありますが、実際はどうなのでしょうか。また、保存していた開栓後の酢に白いモヤモヤしたものが浮いていることがありますが、この正体は? 酢の保存方法も含めて、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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理論上、酢は腐らないが開栓後は冷蔵庫へ

酢は、原料や製造方法によって、穀物酢や米酢、黒酢、リンゴ酢、バルサミコ酢など、さまざまな種類があります。種類によって本来の風味を味わえる賞味期限の長さが異なりますが、結論からいうと、理論上、酢が腐敗することはありません。酢には、強い殺菌作用がある酢酸が含まれているからです。食べ物を腐らせる原因となる菌でさえも、酢の中では生きていくことは不可能だといわれています。

酢を保存する際は、直射日光や高温を避けた、涼しいところが良いでしょう。酢は冷蔵庫に入れなくても腐ることがないといわれていますが、保存方法によっては酸化する心配があります。開栓後は、キャップをしっかり閉めて、冷蔵庫で立てて保存しましょう。

また、酢といっても、ポン酢やもろみ酢、砂糖やだしなど調味料が混ざっている酢の場合は、開栓後の保存環境が悪いと傷みやすくなるので注意が必要です。開栓したら冷蔵保存をし、賞味期限にかかわらず、できるだけ早めに使い切りましょう。

瓶や酢差し容器の酢に白っぽいものが

開栓した酢の瓶に、白っぽいモヤモヤ、ふわふわした浮遊物が発生してしまった経験がある人もいるかもしれません。これは空気中にある酢酸菌が酢の中に混入して、セルロースという糖質ができたためと考えられます。体への害はないといわれていますが、酢の品質が落ちていて風味が損なわれる原因になるので、食用で使うことは控えたほうが良いでしょう。

予防策は、使用したらすぐに瓶のフタを閉めて、酢がなるべく空気に触れないようにすることです。酢差しなど小分けの容器を使っている場合は、継ぎ足しはしないこと。また、一度器に出した酢は、再び瓶や酢差しに戻さないでください。使う分だけを注いで使うようにしましょう。

セルロースが発生してしまった酢は、やや匂いが気になりますが、穀物酢であれば掃除などに使用することをおすすめします。除菌や汚れ落としに向いているため、水で薄めてスプレー容器に入れてシンク回りなどに吹きつければ、除菌が期待できますし、汚れも落ちやすくなります。

また、曇ったガラス食器、茶渋がついた茶碗や急須などは、粗塩(大さじ2)に酢(大さじ1/2)を混ぜたもので磨くとぴかぴかになります。洗い水に酢を入れて洗うだけでも、ツヤが出て美しく光るので、活用してみてはいかがでしょうか。

健康効果も注目される酢

酢には酢酸のほか、クエン酸などの有機酸が多く含まれています。このことから、暑くなってくる時期は、糖分と一緒に摂取すると疲労回復に効果的です。近年の研究では、酢のさまざまな健康効果が注目されています。たとえば、食後血糖値の上昇抑制、体脂肪や内臓脂肪の減少、血圧低下、疲労回復などです。

ただし、強い酸の影響で食道や胃の粘膜を傷つけるので、酢をそのまま飲むのは危険です。また、空腹時に摂取すると刺激を強く感じることがあります。

調味料として、煮物やスープ、納豆やサラダにかけたりすると、素材の味わいをより引き出し、料理に酸味をプラスすることで減塩にもつながります。水で割ってドリンクとして飲むのも良いでしょう。酸っぱさが気になる場合は、ハチミツを入れるとおいしいです。

1日あたり大さじ1杯(15ミリリットル)を目安に、継続して料理にプラスすることを習慣化していけば酢のメリットも摂れますし、風味が落ちないうちに使い切れます。

和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。

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