「H3」3号機30日打ち上げ…堅実な成功狙い固体ロケットブースター採用 1号機の失敗契機、課題は国際競争力損なうコスト高

極低温点検中のH3ロケット3号機。下部の左右に付いている白い部分が固体ロケットブースター=南種子町の種子島宇宙センター(JAXA提供)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、新型基幹ロケット「H3」の3号機を30日、鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターから打ち上げる。固体ロケットブースターを使用する「日本のお家芸」とも言える従来型を採用し、費用を抑えられるブースターなしは見送った。昨年3月の1号機失敗を受けて、まずは堅実に成功を重ねたい考えだ。一方、専門家からは「よりスピード感を持って低コスト化しなければ、国際競争から取り残される」と危惧する声がある。

 今回3号機に搭載される「だいち4号」は当初、ブースターなしの2号機で打ち上げられる計画だった。失敗を受けて2、3号機ともブースターを使用。次に控える4号機でも採用が決まっている。

 「1号機の失敗が大きな契機となった。しばらくは実績のある形式でいくと決まった」。21日に鹿児島市であった会見で、H3開発責任者の有田誠プロジェクトマネージャはブースターを使う理由を説明した。

 これまでのH2AやH2Bの国産大型ロケットは全てブースターを使っていた。H2Aの後継機となるH3は、積み荷に応じて主エンジンやブースターの数を変えられるのが特徴で、四つの打ち上げ方法がある。しかし、H3の目玉の一つだったブースターなしでの打ち上げ時期は、見通しが立っていないのが現状だ。

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 宇宙輸送は国際競争が激化しており、商業衛星の受注には打ち上げ費用の低価格化が求められる。H3はJAXAと三菱重工業が共同開発。費用は最も安いブースターなしでH2Aの半額の約50億円を目指す。

 また、1段目の主エンジン「LE9」の改良による低価格化も計画する。

 有田マネージャは「H2Aの半額という旗印を降ろすつもりはないが、今すぐという所までは至っていない」と説明。「低価格化のために信頼性をないがしろにはしない」とも述べた。1号機失敗では衛星の「だいち3号」を失っており、バランス重視で進める考えだ。

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 H2Aは本年度中に残り2機を打ち上げ引退する。唯一の大型ロケットとなるH3の打ち上げ能力は、今のところ年6機程度。1号機から2号機まで1年近くかかった影響もあり、積み荷は現在順番待ちの状況だ。

 来年度は既に、官需の積み荷を載せる6機が計画されている。商業衛星を載せる余裕はないのが現状だ。さらに増やすには、老朽化が進む種子島宇宙センターの改修が必要になるという。

 宇宙輸送に詳しい宇宙ベンチャー企業役員の米本浩一さんは、「世界のロケット市場を独占する米国のスペースXや月面への基地建設を目指す中国と比べ、日本は遅れている」と指摘。「国内の宇宙輸送を支えるのはH3しかなく、今後も官需はあると甘く考えているのでは。商業衛星を受注していくには低コスト化を急ぐ必要がある」と話す。

ごう音とともに上昇するH3ロケット2号機=2月17日、南種子町の種子島宇宙センター

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