「自然とこうなっていました」超豪快フォームから最速145キロ 福岡の公立注目校を引っ張る右腕【高校野球福岡大会29日開幕】

11年ぶりのシード校となり甲子園を目指す糸島のエース横山

第106回全国高校野球福岡大会は29日に開幕し、135チームの頂点を目指す熱戦が繰り広げられる。春の福岡大会で公立の春日が優勝し、公立の活躍が期待されるこの夏、糸島が2013年以来11年ぶりにシード校として大会に臨む。昨秋の福岡大会8強、今春は5回戦進出と上位進出の原動力となったのが最速145キロ右腕の横山侑汰(3年)だ。無印だった県立校から出現した快速右腕は初の甲子園を目指しチームをひっぱっていく。

左手を高く上に突き上げて投げ込むダイナミックなフォームから速球を投げ込む。「投げやすいようにしたら自然とこうなっていました」。昨秋の福岡大会は修猷館、久留米商などを破り準々決勝の飯塚戦まで5試合を一人で投げ抜いた。春は4回戦で福岡第一を1―0で完封。横山の名前が広く知られるようになった。

中学時代は球速120キロ台の投手だった。「球が遅かったのでコントロールで打ち取るタイプだった」と振り返る。入学して半年で132キロを記録すると「140キロを超えたい。速い球で打ち取りたい」と球速アップへの意欲が出てきた。溝口拓朗監督に筋力トレーニングを勧められ練習場の器具を使ってトレーニングを始めた。昨夏は135キロを超え昨秋には138キロと順調にスピードが伸びてきた。冬を越えると練習で自己最速145キロを計測。体重は入学時の50キロ台から69キロに増え、今ではスクワットで140キロの重りを持ち上げる。「速い球で押していく投球ができるようになりました」と投球スタイルも変わった。順調に成長してきたエースのポテンシャルを「横山より球速の速い投手はいましたが、投手としての総合力では今まで教えてきた選手で一番の選手だと思う」と溝口監督は高く評価している。

高校進学時には私立校からも話が来ていたが「強いチームで活躍する自信がなかった。地元の公立でエースとして投げた方がいいと思って」と県立校の糸島へ進学。私立の強豪校も抑えるまでに成長した横山がこの夏対戦したいと目標にしているのが、昨秋の準々決勝で敗れた飯塚だ。失策絡みで4点を失い最終回に3ランを浴びて7失点で敗れた。「最後はバテてしまって変化球でストライクを取りに行った球を打たれた」と悔いが残っている。ともに順調に勝ち進めば5回戦で対戦する。「勝ち進んで夏の大会でリベンジしたい」と昨秋とは違う姿を見せるつもりだ。

春の福岡大会で県立の春日が優勝したのが刺激になっている。「公立が優勝したので、自分たちもやってやろうという気持ちになった。いいモチベーションになっています」。目標はもちろん甲子園。糸島はこれまで夏の大会は8強が最高。先輩たちの記録を越えて戦国福岡に旋風を巻き起こしてみせる。(前田泰子)

◆横山侑汰(よこやま・ゆうた)2007年3月10日生まれ。福岡市出身。玄洋小3年の時「愛宕浜ブルーオーシャンズ」で軟式野球を始める。玄洋中では「西福岡メッツ」に所属し投手。3年時に全国大会に出場。糸島では1年秋からベンチ入りし昨秋からエースになる。好きな投手はドジャース山本由伸。175センチ、69キロ。右投げ右打ち。

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