日銀多角的レビュー、ノルム偏重の議論に吉川参与が苦言

Takahiko Wada

[東京 27日 ロイター] - 日銀が5月に開いた金融政策の多角的レビューのワークショップでは、出席した日銀参与の吉川洋・東京大名誉教授から、多角的レビューでの論点の立て方について苦言が出ていたことが分かった。

日銀が27日、ワークショップでの議論をまとめたリポートを公表した。

吉川氏は、2013年からの量的・質的金融緩和(QQE)について、日本経済の低迷の原因はデフレであり、デフレは「貨幣的な現象」であるからマネーを増やせば問題は解決する、という主張に基づくものだったと指摘。

その上で「今回の多角的レビューにおいて、この点の是非について議論せずに、物価上昇率が2%まで上がらなかった原因として金融政策以外の要因であるノルム(慣習)について議論している」とし、議論の内容自体に違和感はないが「日本銀行の対外的なコミュニケーションとして大きな違和感がある」と語った。

吉川氏の発言に対し、内田真一副総裁は「コミュニケーションの問題についてのご指摘はしっかり受け止める」と述べた。

その上で、2%の物価目標の実現に想定以上の時間を要しているのは事実であり、その背景としては、政策効果の不確実性や労働市場のスラック(需給の緩み)の大きさに加え、物価や賃金が上がってこなかったノルムの存在も考えられると説明。「今後、2%目標の持続的・安定的な実現に向けては、ノルムについて理解を深めることが重要と考えている」と話した。

吉川氏はかねてから黒田東彦総裁(当時)が推進した異次元の金融緩和に批判的なことで知られている。2023年5月、日銀の参与に就任した。

© ロイター