旧東京中央郵便局などを手掛けた『南砺市福野生まれの建築家・吉田鉄郎』…福野に残る吉田建築を次の世代に

富山県南砺市福野生まれで、大正から昭和の戦後にかけて活躍した建築家、吉田鉄郎。
建築業界ではその名を知らない人はいないと言われ、旧東京中央郵便局(いまのKITTE)や、旧京都中央電話局(いまの新風館)といった近代建築の名作を手掛けました。
実は、吉田鉄郎の建築がいまも故郷の福野にあることは、これまであまり知られてきませんでしたが、去年、そのうちの一つが国の登録有形文化財に指定されました。
その吉田建築を次の世代に残していこうといま、地元の有志が動き出しています。

南砺市福野の市街地にある古民家「梶井邸」。
もとは呉服店だったこの家の離れが、吉田鉄郎が手掛けた建物です。

Q築何年くらい?
「1923年の建物なので、101年」

地域活性化に取り組む福野家守舎の代表、北川智之さんです。
数年前から、仲間と共に吉田鉄郎建築の保存と活用に力を入れています。

*福野家守舎 北川智之代表
「北向きの窓だけれど、押し入れの上に窓がある和室は非常に珍しく、吉田鉄郎の建築の特徴の一つ。建築自体に派手さはないが、細かいところにこだわりが感じられる」

床の間の上を見ると、天井板を抑える竿状の木の向きが直角になっています。
伝統的な日本建築ではタブーとされてきたしつらえですが、モダニズム建築の先駆者、吉田鉄郎らしさが表れています。

去年、この家が空き家となり、関係者から相談を受けた北川さんたちが保存に向けたプロジェクトを立ち上げました。

*福野家守舎 北川智之代表
「吉田鉄郎が設計した建物は全国にもいくつかあるが、当然、本人は亡くなっていてこれから新しく(建物が)できるわけでもないので、そういう貴重な建物はこの地域に残していくべきと考え、クラウドファンディングで資金を募って保存していこうと話し合って決めた」

プロジェクトでは、梶井邸をシェアハウスとして活用することを目指しています。
資金360万円はクラウドファンディングで募り、建物の取得や修繕費に充てます。

*福野家守舎 北川智之代表
「残していくという事だけではなく、建物は使われないとすぐダメになってしまうので、使いながら残していくことを第一考えて、どういうふうに使っていこうかという時に、離れ以外の間取りとか構造を見て、シェアハウスが適しているのではと考えた」

呉服を売っていた店舗の部分を中心に地域の人が集まるスペースを作り、住宅部分をシェアハウスに。
そして『吉田鉄郎の離れ』は、できるだけそのままの姿を残し、見学できるようにします。

今回のプロジェクトではクラウドファンディングを通して、吉田鉄郎の存在を広く知ってもらう狙いもあります。

*福野家守舎 橋爪央樹さん
「吉田鉄郎を、僕ら世代は(学校で)学んでいない。なので知らなかった」

*福野家守舎 嶋田良太さん
「東京中央郵便局とか、京都中央電話局を手掛けていると知り、福野出身の人がこんなことしているんだと、驚きとちょっと誇らしい気持ちとあった。吉田鉄郎のことを知らない人が福野にもたくさんいて、活動していく中で「そんな人おったんや」という反応もいっぱいあったので」

100年の年月を超えて、ここにある吉田鉄郎の原点、梶井邸の離れ。
地元の人の熱意によって未来に受け継がれる宝に生まれ変わろうとしています。

*福野家守舎 北川智之代表
「地域に開かれた場所にしたいという思いもあって、地域の人もふらっと立ち寄れるような居ごごちのいい場所にしていきたい」

クラウドファンディングの目標360万円は6月27日に達成したそうですが、支援は6月28日まで受け付けているということです。
今後、工事を始め、今年11月ごろのシェアハウス完成を目指します。

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