“諭吉”から“栄一”へ20年ぶり新紙幣 対応進む一方、間に合わない店も 高額な改修コストも負担 岩手

7月3日の新しい紙幣の発行まで残り1週間を切った。
渋沢栄一がデザインされた1万円札など紙幣が20年ぶりに一新される。
新紙幣発行を前に岩手県内ではどのような対応が取られているのか取材した。

7月3日20年ぶりに新しいデザインの紙幣が発行される。

新紙幣では、1万円札に近代日本経済の父・渋沢栄一、5000円札には津田塾大学を創設した津田梅子、1000円札には細菌学者・北里柴三郎の肖像がそれぞれデザインされる。

発行が間近に迫るなか、岩手県民は新紙幣についてどんな印象を持っているのか聞いてみると、
「(新紙幣の発行がいつか)知らないです」
「(暮らしへの影響は)ないと思う。現金はほとんど持ち歩かない」
「(1万円札は)大河ドラマで見たので渋沢栄一になるのは楽しみ」
「1万円札を『諭吉』って呼んでいたから『栄一』って言わなきゃならないのかな…」
などの声が聞かれた。

期待感を持つ人もいれば、その実感や影響を感じられない人も多くいるようだ。
県内の小売店や飲食店などでは新紙幣に対応した精算機の更新が進められている。

大船渡市に本社があるスーパー「マイヤ」では、この春までに全ての店舗でセルフレジのシステムを更新し新しい紙幣への対応を済ませた。

マイヤ仙北店の野口由佳副店長は、「お客さまが安心して不便なく買い物ができるのが一番。新紙幣も旧紙幣も使えるので安心して来店してほしい」と話す。

一方、食券機を導入している個人経営の食堂やラーメン店などでは、大手企業と違い新紙幣への対応が追いついていないところも見受けられる。

盛岡市上堂の「中華そばvolare」は煮干しベースの中華そばが人気の店で人件費を減らすために会計は食券機を使って行う。

今の食券機で新しい紙幣を使えるようにするため機械の改修について業者に問い合わせているが、予約が込み合っていて対応できるのは約半年後、改修にかかるコストも約11万円と高額だ。

中華そばvolareの八戸美恵子さんは、「キャッシュレスとかレジとか(導入を)いろいろ考えている。物価も光熱費も上がっているし部品交換はものすごい負担」と話す。

さまざまな業界に影響が及ぶ中、そもそもなぜ紙幣を新しくする必要があるのか?
紙幣を発行する日本銀行は次のように説明している。

日本銀行盛岡事務所 柳宏樹所長
「キャッシュレス決済が普及しているが、現金の需要はいつも根強い。印刷技術の進歩も踏まえて今回新しい日本銀行券の発行になった」

新紙幣を発行する目的の一つは紙幣の「偽造防止」だ。
最新の偽造防止技術として世界で初めて3Dホログラムを採用。見る角度によって顔の向きが変わる。

新紙幣発行の目的のもう一つは、国籍や文化の違いなどに関わらず使いやすく作られた「ユニバーサルデザイン」の導入だ。

外国人にも分かりやすく数字を大きく表記しているほか、視覚障害のある人にも配慮し、ざらつきのある11本の斜線を触ってお札を識別できる特殊印刷が施されている。

日本銀行盛岡事務所 柳宏樹所長
「新しいお札への修繕対応が終わっていないところもある。今のお札はまだ使えるし新しいものにすぐ変わるわけではないので、今のお札も安心して利用できる」

県内の3地銀では全てのATMの更新が終わっていて、新しい紙幣が届き次第順次旧札との両替にも対応するとしている。

© 岩手めんこいテレビ