W杯アジア最終予選、日本は全中東組を回避 前回と似た相手と日程…苦い教訓を生かせるか?【コラム】

日本代表はアジア最終予選でC組に入った【写真:徳原隆元】

日本はオーストラリア、サウジアラビア、バーレーン、中国、インドネシアと同じC組

2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の組み合わせ抽選会が、6月27日にクアラルンプール(マレーシア)で行われ、日本はオーストラリア、サウジアラビア、バーレーン、中国、インドネシアと同じC組に入った。

同日16時(現地時間15時)から始まった抽選会には昨季限りで現役引退した元日本代表FW岡崎慎司氏(バサラ・マインツ監督)と元イラン代表のメフディ・マハダビキア氏が参加。ポット6から4までをハマダビキア氏が担当し、岡崎氏は同3から1を担うことになった。

そして最後の最後で岡崎氏が日本のボールを手にしたことで、C組に決定。北朝鮮やウズベキスタン・キルギスタンの中央アジア勢が入って行きづらいA組、対戦相手が全て中東というB組よりも恵まれた結果になったと言っていい。まさに“日本代表愛”に溢れた岡崎氏らしいナイスアシストだったのではないか。

オーストラリアとは2010年南アフリカ大会、14年ブラジル大会、18年ロシア大会、22年カタール大会、そして今回と5回連続で同組。サウジアラビアも18年、22年に続いて3回連続で一緒。X(旧ツイッター)でトレンド入りした通り、非常に縁がある。中国も2回連続同組。今回の最終予選は前回と非常に似た相手と日程の戦いとなる。

改めて前回を振り返ってみると、21年8月から9月のオマーン(吹田)、中国(ドーハ)2連戦から最終予選がスタート。ご存じの通り、日本はオマーンにいきなり0-1で敗れるという波乱の幕開けを余儀なくされた。続く中国戦は2-0で勝利したものの、10月のサウジアラビア戦(ジッダ)をまたしても0-1で落とし、序盤3戦2敗という絶体絶命の窮地に追い込まれたのだ。

直後のオーストラリア戦(埼玉)で基本布陣を4-2-3-1から4-3-3(4-1-4-1)に変更。鎌田大地(ラツィオ)と柴崎岳(鹿島アントラーズ)を外し、守田英正(スポルティング)と田中碧(デュッセルドルフ)を抜擢したところ、中盤が落ち着き、チーム状態が上向いた。そこから6連勝し、最終的には本大会切符を掴み取ったが、序盤の大苦戦は森保一監督の脳裏に色濃く残っているはずだ。

18年W杯最終予選の初戦・UAE(アラブ首長国連邦)戦(埼玉)でも黒星を喫したことを踏まえると、日本にとって9月シリーズはまさに鬼門。というのも、欧州組がシーズン開幕直後でコンディションが上がり切っておらず、新天地に赴いて定位置を掴み取れていない選手も少なくないからだ。

今回に関しても、代表の主力級である伊藤洋輝(バイエルン)と鎌田の移籍が確定。板倉滉(ボルシアMG)、菅原由勢(AZアルクマール)、田中らが動く可能性が高く、遠藤航(リバプール)、三笘薫(ブライトン)、伊東純也と中村敬斗(ともにスタッド・ランス)、堂安律(フライブルク)、上田綺世(フェイエノールト)らは監督が代わるため、来季の立ち位置が流動的。不確定要素が多いため、森保監督も誰を軸にチームを編成していいか悩ましい状況に陥るのだ。

18年、22年の両W杯最終予選に比べて欧州組の数が増えており、国内組で参戦可能性があるのは長友佑都(FC東京)や大迫敬介(サンフレッチェ広島)ら数人だけ。だからこそ、9月の2連戦は過去にないほど難しいかもしれない。対戦相手が中国ということで、実力的には明らかに格下だが、彼らも日本に対しては敵意を剥き出しにしてくるはず。その勢いに飲まれてしまったら、3度目の失敗も起こり得る。それだけは絶対に回避しなければならないのだ。

9月の2戦目の相手バーレーンもアジアカップ(カタール)で対峙したばかり。あの時は3-1で勝ち切ったものの、相手のホームに行けば何が起きるか分からない。首都マナマで日本代表が試合をするのは2009年1月のW杯予選以来。当時を知るのは長友1人ということで、土地勘や試合勘がないのも気がかりな点だろう。相手もリベンジに燃えているだけに、楽観は許されない。まずは最初の2連戦で2連勝できるか否か。それが日本の命運を大きく左右するに違いない。

命運を握る9月連戦を乗り越えても気は抜けない

10月シリーズは前回と全く同じサウジアラビア、オーストラリア2連戦。相手の実力を考えるとここが山場になるのは間違いない。サウジアラビアの会場も過去に何度も試合をしているジッダが有力視されるが、そのアウェームードは凄まじいものがある。前回柴崎がバックパスを拾われ、決勝点を奪われたのも、その雰囲気や気迫に押された部分も少なからずあったはずだ。

そのサウジアラビア戦を勝ち点1以上で乗り切れば、オーストラリア戦もメンタル的に余裕を持って戦える。アジアカップを見ても分かる通り、今のオーストラリアは過去4大会に比べて伍しやすい相手。もちろんミッチェル・デューク(FC町田ゼルビア)やジャクソン・アーバイン(ザンクトパウリ)など長身選手がひしめいているため、空中戦に課題を抱える日本にとっては難敵に他ならないが、締めるべき部分を確実に締め、点を取るべきところで取れれば、勝利できる確率は低くない。

そのうえで、11月のインドネシアと中国のアウェー2連戦に挑むことになるが、ここまで6試合で順調に勝ち点を重ねてトップに立っていれば、2025年の3月と6月のラスト4試合のうち3試合はホームゲーム。しかも3月のバーレーンとサウジアラビアの2連戦は続けて国内。移動を回避できるという意味で、条件的にはかなり有利。前回は残り1試合というタイミングの2022年3月のオーストラリア戦で本大会出場権獲得を決めたが、今回は6月のオーストラリア(アウェー)、インドネシア(ホーム)に行く前に2位以内を確保できるかもしれない。

ただ、それも含めて、全ては序盤の戦い次第。9月シリーズで躓けば、その分、選手たちに重圧がかかるし、日本としても余裕ある戦いができなくなる。前回経験者である遠藤や南野拓実(ASモナコ)、守田、田中碧、板倉、冨安健洋(アーセナル)らはその厳しさを痛感しているはず。それを頭に刻み込んで9月からフルスロットルで走っていくことを考えるべきだ。

アジア枠が8.5に増えたからと言って、最終予選の厳しさは全く変わらない。C組2位以内というハードルを確実に超えてこそ、26年W杯での8強越え、優勝という大目標が見えてくるのだ。

「アジア予選とW杯は別物」という声もあるが、アジアを制することができなければ、世界を制することはできない。そのくらいの強い覚悟を持って、9月の中国戦から全力でぶつかって行くこと。とにかく勝ちにこだわる強い日本代表の雄姿を我々に見せてほしいものである。(元川悦子 / Etsuko Motokawa)

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