中国の科学者、サルの脳神経活動を記録するプローブを開発

中国の科学者、サルの脳神経活動を記録するプローブを開発

脳の全層の神経活動を記録する「ニューロスクロール(Neuroscroll)」の説明図。(北京=新華社配信)

 【新華社北京6月28日】神経プローブは神経活動を記録する針状の電気センサーで、脳科学研究や「ブレーン・コンピューター・インターフェース(BCI)の中核技術とされる。中国北京大学の研究者はこのほど、技術イノベーションによって高密度、多チャンネルの神経プローブを開発。世界で初めてアカゲザルの脳の全層の神経活動を記録することに成功した。プローブには同時に記録可能な1024の神経信号チャンネルがあり、世界をリードする水準に達している。研究成果は24日、国際的な学術誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」(電子版)に掲載された。

 脳内の複数の領域で時間・空間分解能の高い神経活動を記録することは、大脳の神経メカニズムを理解し、神経活動を調節、制御する上で大きな意味を持つ。既存の多チャンネル神経プローブは主にネズミなどげっ歯類動物の脳研究に適しており、霊長類動物の脳の研究に用いる場合には脳の全ての層をカバーすることが難しかった。

 同大未来技術学院の段小潔(だん・しょうけつ)研究員のチームは超薄型でフレキシブルな微小電極アレー薄膜を設計、作製し、リールのような特殊な巻き取り、組み立て工程を経て、「ニューロスクロール(Neuroscroll)」という名の神経プローブを完成させた。プローブの長さはげっ歯類や霊長類の脳の大きさに合わせ、1~10センチの範囲で柔軟に設定できる。

中国の科学者、サルの脳神経活動を記録するプローブを開発

長さ9センチの「ニューロスクロール(Neuroscroll)」の実物。(北京=新華社配信)

 多チャンネル神経プローブを作製する際の主なボトルネックはプローブとバックエンド電子機器の接続で、良好な電気接続が神経信号の精密な収集と伝送を可能にする。研究チームは高密度でフレキシブルな冷間溶接技術も開発し、プローブとバックエンド電子機器の高密度な接続を実現させた。

 段氏によると、研究チームはプローブを利用して、サルの脳内で大脳皮質表層から頭蓋底まで全層をカバーする700を超える単一ニューロンの活動を同時にモニタリングすることに成功。ラットの大脳内で2年にわたり安定した神経記録を実現し、プローブの優れた生体適合性や長期記録の安定性を示した。

 中国科学院の院士(アカデミー会員)で北京大国家生物医学成像科学センター主任の程和平(てい・わへい)氏は、この画期的な成果が複数の脳領域の活動を同時にモニタリングし、神経活動と行動学の関係性を探究する上で強力なツールになると指摘。基礎神経科学やBCIなどのトランスレーショナル神経科学の研究に革新的な影響を与えるとの考えを示した。(記者/魏夢佳)

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