一呼吸置ける「生活の句読点になる場所に…」 小林さん夫妻、群馬・千代田町にカフェ「HIRAKU」をオープン コーヒー巡り500店を経て

カフェHIRAKUをオープンした小林さん夫妻

 「文章に『、』や『。』があれば一呼吸を置けて読みやすくなるように、生活の句読点になる場所をつくりたい」。国内外500店以上のコーヒーを巡る旅を経た群馬県出身の小林勇太さん(29)、麻菜(あさな)さん(28)夫妻がこだわりのカフェ「HIRAKU(ひらく)」を千代田町にオープンした。北欧と日本の雰囲気を取り入れた店内に、自家焙煎(ばいせん)の豊かなコーヒーの香りが漂う。2人が作る「人に寄り添う味」を求め、多くの人でにぎわっている。

 勇太さんは東吾妻町出身。大学時代にコーヒーに目覚めた。あるカフェで口にしたエスプレッソに「同じ黒い液体なのにこんなに違うんだ」と驚き、味のとりこになった。

 米国ニューヨーク、豪州メルボルン、香港、マカオのカフェで味を追求。国内でも旅館や農家で働きながらカフェ巡りを続け、計500店以上を訪ねた。翌20年、岐阜県の下呂温泉の旅館で住み込みで働いたとき、同じ旅館に勤務していた麻菜さんと出会って意気投合した。群馬に戻ってコーヒーの通信販売やキッチンカーでの販売を始めた。

心に寄り添うコーヒーを

 試練もあった。2人で半年かけて完成させたキッチンカーが交通事故に遭い、営業できなくなった。1年近く、空しさで気持ちを立て直せなかったが、「こんな時に心に寄り添ってくれるコーヒーを作りたい」と思えるように。クラウドファンディングで資金を集めてキッチンカーを再開した。

 麻菜さんは千代田町出身。勇太さんの情熱に影響を受け、「老若男女、あらゆる背景を持つ人が一息をつける空間をつくりたい」と思うようになった。

 店名のHIRAKUには「コーヒーの魅力の扉を開く」「閉ざされた心を開く」などの意味を込めた。多くの人に親しみやすい味にしようと、豆の特徴は残しながら、とがった印象がなくなるよう、焙煎や入れ方を調整する。コーヒーが苦手な人向けの抹茶ラテやはちみつ紅茶も用意する。

 昨年12月のオープンから半年が経過した。勇太さんは「僕もコーヒーに救われてきた。せわしない毎日に句読点を打ち、気持ちを整理する居場所になれれば」と話した。

コーヒーをいれる小林さん

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