海辺の廃業ホテルが復活へ 日常のストレス忘れ、心も体も休める場所に…体調不良に悩んだ男性が一念発起 山口・長門

山口県長門市で、廃業したホテルが改装され、7月にグランドオープンします。現代社会のストレスを感じる人の助けになりたい -。自身の経験を元に、心も体も休める場所を提供しようと、ホテルの再出発に取り組む男性を取材しました。

廃業後10年以上放置のホテルを改装

2011年に惜しまれながらも閉館したホテルです。長門市日置地区で「黄波戸温泉観光ホテル」として営業し、閉館後はそのまま10年以上放置されていました。

海を一望できる絶好のロケーションに魅了されたのが、大谷恭孝さんです。下関市を拠点に、県内6か所で学習塾を展開しています。2021年にホテルを買い取り、来月のグランドオープンに向けて改築工事を続けています。ホテルの名前は「北長門リトリートホテル悠久の季」。

北長門リトリートホテル悠久の季・大谷恭孝代表
「1番はここの自然ですね、目の前が青海島できれいな海で、次に大きいのは長門の食材、温泉もありますしね」

建物は、鉄筋コンクリート造りの3階建て。2年前から改修工事を続けています。そのうち、1階にあるレストランと物販コーナーが、先行して5月から営業を始めました。ラウンジでは景色を見ながら、コーヒーを楽しむこともできます。

地元の客
「最高、すごく見晴らしがええんちゃ、ここは」

体調を壊した経験からこの場所へ

大谷さんがこの場所を選んだのは、自身の経験に基づいたものからでした。5年ほど前、パニック症と思われる症状が出ました。突然どうきが激しくなり、過呼吸や手足のしびれなどこのまま死んでしまうのではないかという恐怖感に襲われたそうです。

大谷さん
「パニック障害のような症状が起こって、その時に体験者の方のブログだったり、本を読んだり、そうすると自然に触れておいしいもの食べて温泉入ったりして、ゆっくり過ごすのがいいよっていう声が多かったので」

医者にはかからず、九州の温泉地を巡るなどして日常を忘れ、心も体も休めることで、徐々に快方に向かったといいます。

大谷さん
「その体験があって、ここの場所がそれにぴったり。これ皆さんの役に立つなっていうのが強いんじゃないかと思いますね」

長門の食材生かし 料理にもこだわり

おいしいものにもこだわりを見せる大谷さん。長門の食材にほれ込みました。料理長として全幅の信頼を寄せているのが猿渡順一さんです。17歳の時から全国各地で腕を磨き、本格的な和食を得意としています。

北長門リトリートホテル悠久の季・猿渡順一料理長
「俵山の百円市場に寄って、チンゲンサイとダイコンを。これ100円です」

長門市の魚や野菜は新鮮でおいしく、魅力あふれる土地だといいます。

猿渡料理長
「やりがいをとても感じております。四季に応じていろいろおいしい魚も野菜も変わっていくので常に気を遣って、おいしい方法で提供していきたいと思っています」

レストランでは日替わりメニューが人気です。この日は、タイの昆布締め、トラフグの煮こごりなど8種類。ごはんは、美祢市の半田弁天湧水で炊き上げるなど、おいしさにこだわります。価格は1650円、長門市民には1320円で提供しています。

下関市から来たグループ
「タマネギが丸ごとあったり、ニンジンもおいしかったね。魚も仙崎。おいしい」

にぎわい復活へ地元も期待

ホテルの復活は、地域の人たちも期待を寄せています。

地元の人
「うれしいです。地元民にとっては、油谷ですからお茶を飲むような所もあまりないですから、ちょうど長門の中間点。なによりこの海がごちそうです」

地元の漁師も海から見る景色が違ってくるといいます。

地元の漁師
「夜でも沖から港内に入ってくるでしょう、ここの電気が見えんとさみしいですよ、ぜんぜん雰囲気が違いますからね」

ラウンジでは地元の人がくつろいでいました。

地元の人
「結婚して40年になりますけど、ここで結婚式しましたからね、40年前に。多かったですよその頃はね。日置がだんだんさみしくなってくるからね」

学習塾を経営する大谷さん。教育と観光はつながりがあるといいます。メンタルを整えることは、受験でも重要だと考えています。

大谷さん
「受験でうまくいく子っていうのは、やっぱり体力もあって、勉強頑張ったっていうのもあるんですけど、やっぱりメンタルが強く整った子になるんですよね、そうなればメンタルを整える場所は必要だと前から思ってたんですよね、そういう部分は共通していると思うんですよね」

海見える温泉も自慢

温泉は、海が見渡せる男女の大浴場と、貸し切りの露天風呂があります。もともと湧き出ていた温泉が出なくなったため、近くの市営の黄波戸温泉交流センターから運んで来て、日帰り入浴も始めることにしました。市内の5つの名湯をそれぞれ運び、楽しんでもらおうという構想もあります。客室は3組限定で、7月にグランドオープンする予定です。

大谷さん
「アスファルトに囲まれて、ビルに囲まれて、日常生活を必死で頑張ってる方は多いと思うんですよね、それが知らず知らずストレスになっているはずなので、それを和らげる場所になれたらいいなと。それがホテル名にもなっていて、ゆっくり過ごして欲しいなという意味で悠久の季って名前にしてるんですよね」

自身も、がむしゃらに走っていました。パニック症のような症状。ストレスの緩和。誰かのために役立ちたい。そして、廃墟からの再生。強い思いを持って、前に進みます。

【問い合わせ】北長門リトリートホテル 悠久の季
0837-37-3737
※2024年7月グランドオープン予定

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