【J1川崎、内容好転と連続引き分けという成長と課題の中で(2)】「前半がよかった、と3試合続いているけど…」と選手が語る中で持つ、「苦しい時間も耐えなきゃ」の危機感

前半に放った川崎フロンターレDF佐々木旭のシュート場面 撮影:中地拓也

期限付き移籍先のモンテディオ山形から復帰するも、昨年12月に左内側半月板損傷に伴う手術を受け、6月にようやく実戦復帰を果たしたFW宮城天は、リハビリ中に外から見るケースが多かった川崎フロンターレの変化をこう語った。

「立ち上がりからみんな飛ばして、ハイプレスがすごくはまっている結果として前半は圧倒するというか、自分たちの優位な展開が続く試合が多くなっている」

変化が顕著になったのは、ホームのUvanceとどろきスタジアムでサンフレッチェ広島と1-1で引き分けた、29日のJ1第21節までの3試合。昨シーズンの王者・ヴィッセル神戸に覇気なく敗れ、捲土重来を期した直後の3試合でもある。

ここまで累積警告による出場停止の1試合を除いた全試合に出場。プレー時間が1550分を数え、ルーキーイヤーだった2022シーズンの1551分を更新するのが確実になっているDF佐々木旭は、変化を認めながらも「うーん」と首を傾げる。

「でも、手応えはあまりない。神戸戦に比べればよくなっている印象はあるけど、やはり勝たなきゃいけない。前半がよかった、という試合が3試合続いているけど、それだと自己満足になるというか。後半もしっかりとボール握らないといけないし、今日みたいに苦しい時間も耐えなきゃいけない。その意味でまだまだなのかなと」

■佐々木旭「もっと外で勝負しなきゃ」

23分にFWマルシーニョの3試合連続ゴールで先制しながら、アルビレックス新潟との前々節、湘南ベルマーレの前節に続いて追加点を奪えない。迎えた82分。鬼木達監督はDF大南拓磨を投入し、3バックにスイッチした。

攻めるよりも守る方へ比重を置く、という指揮官のメッセージ。しかし、残り2分とアディショナルタイムをしのげば勝利という88分にシナリオは暗転した。

左ウイングバックの満田誠が、MFエゼキエウにパスを預けて中央へ侵入する。エゼキエウは左へもち出し、直後に意表を突くヒールパスで川崎の選手たちを翻弄。あうんの呼吸でリターンを受けた満田が、迷わずに右足を振り抜いた。

強烈なシュートはブロックしたDFジェジエウに当たってコースを変え、ゴール右隅に吸い込まれた。守護神チョン・ソンリョンも一歩も動けなかった。

「みんな体を張っていましたけど、それでもなるべくゴールから遠いところで勝負できればよかった。あのレンジだと当たって、コースが変わるケースもあるので」

痛恨の失点シーンを振り返った佐々木は、さらにこんな言葉を紡いでいる。

「(最終ラインが)5枚になって確かに中には人がいましたけど、人が多くなったからこそ、カットインしてきた選手に対して『誰がいくのか』みたいな状況になってしまったというか。相手のウイングバックに対して僕たちもウイングバックではめられたし、その意味でももっと外で勝負しなきゃいけなかった」

■宮城天「プラスの作用を起こさなきゃ」

負傷したマルシーニョに代わって65分から投入され、3バックにスイッチした後はFW小林悠と2トップを組んだ宮城も、自分自身へ矢印を向けた。

「自分を含めて、交代で入った選手たちがチームにプラスの作用を起こさなきゃいけない。実際に試合に出ている身なので、いまの状態が何パーセントなのかはあまり言いたくない。それでも、すぐにでも100パーセントに近づけて、怪我をする以前の自分に戻るというよりも、新しい自分にならなきゃいけないと思っている」

3試合連続で先制しながら、新潟戦は後半アディショナルタイムに逆転された直後に宮城のアシストから山田が決めて追いつき、湘南戦は78分に、広島戦では終了間際に追いつかれた。試合内容が好転しても思うように勝ち点を伸ばせない川崎で、若手や中堅を含めたすべての選手たちが、悔しさを糧に必死に前を向いている。

(取材・文/藤江直人)

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