養育困難な子どもの委託率は目標の40%に対して17%…里親制度の周知進まず 民間の支援者は「行政が主体となって動いて」

〈「託す」2024かごしま知事選より〉

 少子化が進む。鹿児島県内の2023年の出生数は初めて1万人を割った。一方、さまざまな事情で家庭での養育が困難な子どもは600人を超える。

 「自分が家族を持ったとき、どうすればいいのか分からない」。県里親会の会長を務める久木田美智代さん(61)=鹿児島市=は15年ほど前、県外の養護施設で育った子の言葉に胸をつかれた。「家族」の形を伝えられたらと、養子縁組を目的としない養育里親に登録した。小学1年と6年のきょうだいを引き取って5年になる。「けんかもできるようになった」と目を細める。

 国は16年から、施設より里親など家庭に近い環境での養育を優先する。県内では23年度末時点、家庭に代わる養育が必要な20歳未満の子どもは666人。里親登録は259世帯、そのうち61世帯に82人が委託されている。

 5~6人を養育するファミリーホームと合わせても県内の委託率は約17%。全国平均より低く、29年度末で40%程度とする県の目標へもほど遠い。

 久木田さんは「行政が主体となって里親制度の周知を進めるべき」と訴える。預けると子どもを取られるのではないかと拒否する実親もいる。「一緒に育てようというのが里親だと知ってほしい」。若い世代には「育てるのが難しければ、社会に託すこともできると伝えたい。学校の性教育に盛り込み、乳児遺棄などが減ってくれたら」と話す。

 里親に対する支援も課題だ。登録前から継続的にサポートするフォスタリング機関は、他県では民間に委託し複数設置する所もあるが、県内では各児童相談所に里親担当を配置するものの、支援班や推進員がいるのは中央児相の1カ所のみだ。県は本年度、国が制度化した「里親支援センター」開設に向けて委託先を公募する。久木田さんは「将来的には児相の管轄ごとにセンターができてほしい」と期待を込める。

 「実親と暮らしたい」「自立して自分の家族が欲しい」…。子どもたちが望む暮らしをかなえるため、制度や環境を整えるのは大人の責任と感じる。知事選は子どもたちの代弁者として1票を投じるつもりだ。「目立つ意見ばかりでなく、声を上げられない、弱い立場にもっと目を向けて。トップこそ現場に足を運ぶ人であってほしい」

里親制度の周知を訴える県里親会会長の久木田美智代さん=鹿児島市

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