タガネで硬い岩石を慎重に削っているのは日端義美(ひばた・よしみ)さん80歳。
石を愛し、集め続ける石の愛好家です。
元NTTの職員で岩見沢市に住む日端さんは、およそ70年間にわたり様々な形や種類の石を集めてきました。そんな日端さんには週に何度も通うとある場所があります。
到着したのは、岩見沢市栗沢町の美流渡地区です。
去年1月、日端さんはここ栗沢町におよそ7ヘクタールの土地を購入しました。
ここで草や木などの環境の整備をしたり”あるもの”の発掘をしているといいます。
日端義美さん「これこれ」
沢の中でなにかを見つけた日端さん。さっそくハンマーを握り、タガネを打ち込んでいきます。
「カンカンカン」
日端義美さん「丸くないこれ。こっちに伸びている」
あっという間に掘り出され、その姿が見えてきました。
掘りだしたものを見てみるとまるで「オカリナ」のような形をしています。
日端義美さん「どっかの関節だな、間違いなくこれ」
日端さんは、中学生のころから岩見沢市内で貝の化石探しに夢中になり、30代のころには、毎朝、川で石を集めてから会社に行くほど「石」の虜なっていたと話します。
日端義美さん「朝日(岩見沢市内)ってあるんだけど、貝の化石がいっぱい出ていたから行っていたし、30代からは「石の会」に入って、川にしょっちゅう行っていた。やっぱり美だわ、形と時代が感じられる。派手じゃないけどやっぱり自然石ってすごい」
日端さんは、この土地を買う前に調査をしたとき、ここで「化石」のようなものを発見。
それ以来、沢を歩いて石を探すことが日課となっています。
岩見沢市内のこどもたちも日端さんの土地に時々遊びにきて一緒に発掘を楽しんでいるといいます。
日端さんに教わりながら、記者も体験してみると・・・
富永誌衣那記者「とれました」
日端義美さん「確認するのは、この先がある可能性があるんだけどこれは丸いでしょ?ということは(先が)もうないってことだな」
自宅の2階には、日端さんが集めてきた石がずらりと並んでいます。
その数はなんと、300点ほどにのぼります。
なかでも、日端さんのイチオシは・・・
日端義美さん「ここが首の。(恐竜の)しっぽのほうに向かっての第一頸椎。これが一番大事なところの首の骨。学者じゃないから分からないけど、形態としてはこの図面にそっくり」
ここまで集めてきた石をつなぎ合わせると、確かに、恐竜の背骨のような形に見えてきます。
ほかにも、先端に向かって細く伸びていく恐竜の牙のようなものから一列に並んだ細長い、不思議な形のものまで。
さらには、恐竜の頭にも見えるものもありました。
日端さんが集めた石の数々。家族はどう思っているのでしょうか?
妻の日端徳子さん「娘と2人でこれは石だって言ってる。夫はこれが化石だってどうのこうのって説明するけど、娘と2人で石だよねって言って。」
日端さんの夢。それはこれまで集めてきた石を本物の恐竜の化石だと証明することです。
日端義美さん「昔から石をやっているから絶対に普通の自然ではできないってのが分かっているから。こんな形が(自然に)でるわけない。いま分からないやつをなんとか化石の学会の人そういう人たちに見てもらって少しでも解明していきたい」
日端さんの思いに答えるべく番組では「北海道博物館」に鑑定を依頼することに成功しました。
後日、再び日端さんの自宅を訪ねおよそ300点のコレクションの中から鑑定してもらう石を選ぶことに…果たして恐竜なのか何なのか?
日端義美さん「やっぱり1つ分かれば次から次に分かってくるから専門の知識ある人にみてもらわないと進んでかないんでどうしても。分かるようにしていただければすごくうれしい」
今回鑑定してもらえる石は3点のみ。
日端義美さん「3つか~全部持って行ってもいいんだけどな」
迷いながら決めたのは、恐竜の頚椎のような形のものと指のような形のものそして・・・
日端義美さん「一緒にとったこれ持っていく?本当に自分たちでこのあいだとったばっかりだから。これがここの、しっぽのここじゃないか」
先日、沢で一緒に見つけた「オカリナ」のような形をした”石”も選びました。
この3点の石を預かり、いざ博物館に向けて出発!
やってきたのは、札幌市厚別区にある北海道博物館。
調査をするのは、北海道博物館でおよそ12年、地学担当として勤めている圓谷(えんや)さんです。
北海道博物館地学担当学芸員圓谷昂史さん「みていきますね」
その結果は・・・
北海道博物館地学担当学芸員圓谷昂史さん「とれた場所と状況によって判断は変わってくると思うんですけど、一見した感じでは、恐竜とかっていうような化石とはちょっと違うかなという印象。骨ですと、骨の内部を、骨をスパっと縦に切ると、中に海綿状の空洞があるような組織とかちゃんと詰まっている部分もある」
調査した3点には残念ながら「恐竜」の化石だと判断できるものが見当たらないということです。では、どうしてこんな恐竜の骨のような形になるのでしょうか・・・?
北海道博物館地学担当学芸員圓谷昂史さん「石ができた時の環境として、例えば地面の中から掘り出されて、雨とか水の流れなどによって、だんだん削られていってこういう形になるということももちろんある」
今回の調査結果を日端さんに伝えに行くと・・・
日端義美さん「もし断定できないっていうんだったらそれしかないから。うちはもう形でそういう風にして楽しめばいい話だから。別段そんなショックは受けていない」
ちょっと残念な表情をみせた日端さんですが発掘の意欲は衰えていません。
日端義美さん「Q今後も発掘を続けていく?もちろん続けていく。
まだまだ解明したい問題はいっぱいあるから」
今後も石を掘り続ける日端さん。
いつかこの場所から新たな大発見が見つかるかもしれません。
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