供えた線香を持ち上げて確認… 沖縄・慰霊の日の警備に疑問 県は「安全で静ひつな式典運営」と妥当性強調

今年の慰霊の日、沖縄全戦没者追悼式の警備では、去年に続き1000人以上の警察官が動員されました。厳重な警備体制には抗議の声もあがっています。慰霊の日に求められる“静謐(せいひつ)”について考えます。

▽永田町を歩く具志堅隆松さん
「初めて買った傘が役に立ってる。だいたいカッパで済ませていたんですけど、人が傘をさしているのを見たら、いつか傘買いたいなと思ってて。憧れですね」
自発的に傘を差したのは人生ではじめて。そう話すのは具志堅隆松さんです。遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」として約40年。沖縄戦の戦没者の遺骨を掘り起こし、遺族に帰す活動をしてきました。両手は常に使える様に、がモットーです。上京した目的は、警察庁との意見交換会。慰霊の日を5日後に控えて、要請するのは。
▽具志堅隆松さん
「まず後ろの写真がありますよね。あれ平和の礎なんですよ。あれ、霊域も霊域なんですよ。そこに入って来ていちいち調べられると、私たちとても心が傷つけられるものなんですよ」

「平和の礎」における警備態勢について。

去年の沖縄全戦没者追悼式の警備で、県警は県内外から1000人以上の警察官を動員。平和の礎でも一時、参拝者より警官が多くいる状態になりました。
▽参拝者(去年)
「今年はすごいですね。なんか異様な感じがします」
▽参拝者(去年)
「警護が多くなったということで、怖いから私は行きませんでしたという人も何名もいた」
(Q:純粋に慰霊という気持ちとは?)
「ちょっとかけ離れています」

遺骨が戻らない遺族にとって、戦没者の名前が刻まれた礎はお墓の様なもの。「だから今年は過剰警備はしないでほしい」そう伝えるのが具志堅さんの目的でした。

ー警察庁との意見交換会で具志堅隆松さんー
「(去年は)これまでと違って、ものすごい警備が強化された。その理由は何でしょうか」
▽警察庁の担当者
「警備につきましては、沖縄県警察において主催者である沖縄県と連携をしながら、情勢を踏まえて、必要となる警備態勢を構築し警備を行った」

県警に警備協力を依頼する県は、礎での警備について次のように話します。

▽沖縄県保護・援護課 又吉剛課長
「まず安全性の確保が一義的にありますので。例えば安倍元首相襲撃事件や岸田首相襲撃事件などを踏まえて、参列されている多くの方々に危険な状況がないように、県警に県からお願いしている。知事も話していた通り、安全で静謐な式典運営に努める形となっています」

慰霊の日当日。

ー県の担当者と交渉する具志堅さんー
「この写真わかりますよね。警官が去年は平和の礎の中で沢山入り込んで不審物を探しているかのような捜索をしているが、これは県民に対して認める?」
平和の礎での大規模な警備は控えてほしい。3日前にも県に要請はしていますが、
慰霊の日当日も念を押します。
しかし午前8時半過ぎ。去年と同規模の警備は行われました。

手向けられた花や線香を目視するだけでなく、持ち上げて確認する様子も。

ー抗議する具志堅さんらー
「警察官は平和の礎から出て行って下さい。ここには不審物はありません。ここは捜査の対象にならないはずです。出て行って下さい」
警察の警備以上に平穏な時間を壊して。それでも抗議する具志堅さんと、戦没者遺族である男性。突き動かしたものは、理屈にならない感情です。
▽沖縄戦で姉を亡くした小橋川共行さん
「遺骨もない肉親が眠っている所ですからね。自分でも意外で分からなかったが。
なぜこみ上げるか分からなかったが(警察を見て)涙が出てきた」
思いを同じくする参拝者も。
▽那覇市から参拝
「荒らされてますよ完全に。何考えてるんだか」
▽沖縄戦で兄と姉を亡くした富底正彦さん
「礎の警備は絶対許せるものじゃないと思っています」
(Q:具志堅さんに思いを託している?)
「そうそう。僕はこしを痛めているから。歩くとしびれてきて。本当は歩きたい気持ちもある」
▽具志堅隆松さん
「大声を出すこと自体、本当は不謹慎なのはわかっています。しかし、遺族に対する横暴を見逃すわけにはいきません」
国籍や軍民を問わず沖縄戦などで亡くなった全ての人の名前を刻んだ平和の礎。その分け隔てのない空間で。それぞれが大切にしている〝静謐〟をどう守っていくのかが、問われています。

【記者の視点】
静謐な環境は大切だと思いますが、遺族の心の平穏を損なってるという現状は黙殺してはいけないと思います。(今井憲和)

© 琉球放送株式会社