老老対決

 とても仕立ての良さそうなダークスーツをスラリと着こなしてステージへ。鮮やかな青と赤のネクタイはそれぞれの党のイメージカラーだ。2人とも見た目はしゃきっとしている。ただし“年齢を考えれば”の注釈付きで▲昭和17年11月生まれの81歳と、同21年6月生まれの78歳。激しく議論を戦わせた“後期高齢者”の2人。日本の元号で書いたのは彼らの年齢がより伝わりやすいか、と考えたからだ▲「うそつき」「史上最悪」の応酬が「議論」と呼べるかどうかはひとまずおく。11月の米大統領選に向け、再選を目指すバイデン大統領と、返り咲きを期すトランプ前大統領が先週、テレビ討論に臨んだ▲優勢を印象づけたのはトランプ氏だったようだ。のどに痛みがあった、と明かしたバイデン氏は弱々しく声がかすれ、討論の途中で言葉が上手く出てこない場面もあった。小さな言い間違えも多く、退場時には妻の手を借りて演壇を降りた▲バイデン氏の選挙戦継続を危ぶむ声が噴出しているという。ニューヨーク・タイムズには撤退を促す社説が載ったそうだ。「国のためにレースを降りるべきだ」▲“老老対決”の大統領選は米国の政治と社会の行き詰まりを象徴している…と何度も指摘されている。外野席の日本でも、きちんと不安を感じておきたい。(智)

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