蚊に刺されないために「玄関前は小走り」「ゆったりした服」「網戸は右側」害虫駆除の専門家が教える”秘策”

じめじめと蒸し暑い季節…蚊の活動が活発になる時期です。
眠りにつこうとするとき…ゆっくりお茶を楽しもうとするとき…そこに蚊がいることが分かった瞬間、とても残念な気持ちになってしまいます。

家族が蚊に刺されたのを目にしたら、自分は刺されていないはずなのに、どこかがむずがゆい気がしてきませんか。

蚊に刺されないためにはどうしたらよいのでしょうか。
害虫駆除の専門家、東洋産業の大野竜徳さんに聞きました。

ーそもそも蚊が屋内に入り込まないようにしたいのですが…

(東洋産業 大野竜徳さん)
「どうしてもおうちの中に蚊が入ってくる、というご相談はよくいただきます。蚊がおうちの中に入ってくる理由、それはメス(お母さん蚊)が卵を産むための栄養を私たちの血から取るために狙ってくるためです。

蚊はオスもメスも普段は夜露のような水や甘い花の蜜を吸っているのですが、産卵前に必要になるので、相手も命がけで私たちに近づいてきてしまいます。

お腹がペコペコの蚊のメスには私たちの気配はごちそうのかおり。なんとか侵入してこようと寄ってきてしまうので、完璧に入り込まないようにするのはとても難しいです。

ちなみに、オスはメスにそっくりですが、一生私たちには興味を持たず、迷子になって近づいてくることはありますが、血は吸いません」

蚊のタイプ別 要注意な時間帯は?

ー血を吸う蚊(メス)の生態を知って、なんとか防除したいです!

(大野さん)
「わかりました。まずは蚊について少しご紹介しましょう」

「ちなみに、蚊の仲間は世界中に3,500種類以上います。日本には100種類くらい、うち血を吸う蚊が20種類くらいでしょうか。特によく身の回りで見かける2つのタイプの蚊に注目してみましょう!」

「1つ目のタイプはいわゆるヤブカ。
黒いボディーに真っ白なストライプの『ヒトスジシマカ』をよく見ますね。この蚊は明るい時間に吸血します。蚊の仲間は暑いのが苦手。なので、少し涼しい朝夕、特に夕方によく血を吸いにやってきます。明るい時間からおやすみまでの間によく見かける蚊です」

「2つ目のタイプがイエカ。
薄茶色のボディーで、周りの色に溶け込むような「アカイエカ」が多いでしょうか。この蚊は暗くなってから吸血します。暑いのが苦手なのは同じですが、この時間帯が曲者です。夜、おやすみー、と照明を消してしばらくしたら耳元で…ぷーーーん…、また、朝起きたら蚊に刺されているのに気が付いて嫌な思いをする正体がこのイエカです」

「網戸は右側」「玄関前は小走り」が”蚊対策”のキーワード

ーまずは、屋内に入れないために、どんな対策がありますか?

(大野さん)
「例外はありますが、蚊は皆さんのおうちの中そのもので発生することは少なく、ほとんどの場合外から入ってきているものでしょう。蚊は飛び回っているイメージですが、わずかに歩くこともあります」

「今回は屋内に入れないために2つの場所で気を付けてみましょう」

「一つ目は窓。窓が開いていたり、隙間があったり隙間があったりすればそこから蚊が入ってきてしまいます。網戸は蚊が入ってこないように作られているのですが、その周りに隙間があれば蚊は入ってきてしまいますので、まずは網戸の周りを点検してみてください。壊れていたら直しましょう」

「ですが、一見、破れたり、ゆがんだり、がたついたり、ということがなくても枠の周りに隙間があるはずです。隙間テープ『モヘア』という名前の、モールのようなもの【画像参照】をうまく貼ってください」

「隙間がうまく埋められたら、次は開け方です。外から虫を入れにくくする網戸の開け方は『網戸は右側』です(一般的な窓で外側に網戸がある場合)」

「2枚の窓がある場合、窓を全開にする場合はどちらに網戸があっても大丈夫です。ところが片方のガラス窓を少しだけあけると、網戸と窓ガラスの間に隙間ができてしまいます。この隙間が蚊にとっては絶好の入り口になります。

この隙間、実は網戸を右側にすると生じないのです。あとは右側の窓で開け方の調整をするのが良いですね。どうしても左側に網戸が来てしまう場合は常に窓全開にするしかありません。例外はありますので窓と網戸の開け方、一度ご確認してみてください」

(大野さん)
「次は玄関です。ただいまー、と家に帰ってきたとき、蚊も一緒に連れて入ってしまっているかもしれません。蚊は私たちの血を狙っています。とはいえ、人を見つけて一目散に刺しに来てはあっという間に返り討ち」

「ですので、蚊はなるべく気配を悟られないように、ここだという場所を探して体に着陸しようと私たちの周りを飛びながら偵察しています。慎重な蚊は結構な距離をついてきます」

「特に歩いているときは着陸ポイントが絞れないので、旋回しながらチャンスをうかがっています。このとき、蚊は時速5キロくらいまでで追ってきます。歩いている間は十分ついてこられる速度ですね。蚊に絡まれているのに気が付いたら、小走りしてまいてしまいましょう」

玄関に着いて家に入る前に鍵を探したりしながらのんびりしていると、今度は玄関周りで開店待ちをしている蚊が寄ってきてしまいます。さっと開けてぱっと戸締り。おうちに侵入させないようにしましょう」

蚊取り器は「テーブルの下」へ 換気扇・水槽から遠ざけて

ー入り込んでしまった蚊には、どんな対策ができますか?

(大野さん)
「おうちに入ってしまった蚊はまるで忍者のように息を殺し、チャンスをうかがっています。残念ながらいるかいないかもわからないこの状態の蚊を探し出すのはほぼ不可能です」

「よく蚊が入ってきてしまうおうちは電気蚊取りか蚊取り線香に頼るしかないかもしれません。こういうグッズは置き場所が重要です。基本的には風上に、蚊が潜みやすい場所に置くことです。おうちの中でどこが風上になるかというと、換気扇からは遠い場所、低くて暗いテーブルの下などの床に近いところに置くのがいいでしょう」

「ちなみに蚊取り線香の豆知識ですが、もくもく出る煙には殺虫効果はありません。蚊取り線香は火をつけると煙を上げながら殺虫成分が出ますが、殺虫成分も火で燃えてしまうので、その前に熱くなった部分から殺虫成分が揮発するようにできています」

「とはいえ、成分は目に見えないので、煙の流れを見ながらその流れをつかむことが大切なのですけどね。電気蚊取りや蚊取り線香などの殺虫成分は、人畜毒性はかなり低い薬剤を使っているので、ほとんど害はない成分です」

「逆に水中の生き物(特にお魚さん)には毒性が高い成分ですので金魚鉢や水槽があるおうちは気を付けてください。特にぶくぶく(エアレーション)周りにこういうものを置いたり、殺虫剤をかけたりするとお魚さんたちにはとんでもないダメージを与えてしまいます」

赤ちゃんやペットがいて気になる人は…

ー屋内では、人には影響しないレベルとはいえ殺虫成分をまき散らしたり、忌避剤をつけたりすることに抵抗がある場合には?(赤ちゃんやペットがいる場合は特に)

(大野さん)
「いくら安全とは言っても電気蚊取りは化学物質だし、蚊取り線香は煙たいし…というご相談をいただくことはありますね。そういう時には、蚊帳(かや)を利用するのがいいかもしれません。蚊がやってきてしまうなら、蚊が入ってこない網戸に自分がこもってしまおう、というものです。あらかじめ蚊が入ってこないようにしておき、赤ちゃんやペットが休んでいる上にかけてあげたり、中に入れてあげたりすると安心ですね。風も通りますし、殺虫成分を使っていないので安心です」

「殺虫成分が空気中に出て来なければ、ということなら、弊社では『タフガードネット』という網を様々な場面で使用しています。見た目は青っぽくて目立ってしまいますが、通常の網戸と同じように蚊は通過することはできません」

(大野さん)
「この網戸の特徴は、殺虫成分を配合していますが、殺虫成分は空気中には出てこず、これに止まった虫にだけ効果があるところです。殺虫成分の有効期間はあるものの、こういうネットを使用して網戸を作ったり、蚊帳を作ったりすることでより蚊を防いでやることができます」

「こういう製品は海外ではマラリアという蚊による伝染病対策としても使用されて効果が出ているものですね。この商品以外にも、最近は日本でも殺虫成分含有の網戸も増えてきています」

厚手のジーンズの上からでも蚊に刺される!ゆったりした服装をしよう!

ー工場やビル、店舗など、建物の構造などによって、対策が難しいこともあるでしょうね。少しでも蚊のストレスを減らすために、できることはありますか?

(大野さん)
「蚊に刺されないようにするには、物理的に、あるいは忌避剤や殺虫剤を使用して化学的に蚊を防ぐしかありません。蚊の入り口が大きく空いていたり、広くて薬剤がいきわたりにくかったりすると対策はとても難しいです。

蚊の口はとても長く、厚手のジーンズの上からでもぷすっと届いてしまいます。夏は薄着になり、露出も増えますが、肌と肌の間に隙間ができる、ゆったりした服を着るのがいいですね」

(大野さん)
「そのほかにはいわゆる虫よけスプレーが便利です。少し前の話になりますが、高濃度のディートや新成分のイカリジンという成分の虫よけスプレーが販売されています。

ディートは50年以上の実績を持つ虫よけ成分で、蚊以外にも様々な私たちの血を狙う生き物に効果がある、とても効果は高い成分なのですが、衣服の繊維を痛めることがあり、濃度によって12%のものは生後6か月以上、30%のものは12歳以上の人でないと使用が推奨されないなどのデメリットがあります。

イカリジンはこういう注意事項がありませんが、蚊以外の虫には効果が薄い、ということがあるようです。虫よけを選ぶときにはよく説明も見てみましょう。

虫よけスプレーは虫を殺すのではなく、虫が刺す相手を見失うような効果があります。使い方のコツとしては、シュッとひと吹きした後、手で延ばすことです。

塗り残しがないように露出している体の部分に吹き付け、しっかり手で延ばしてやること、特に死角になりやすい首筋などは手のひらにスプレーして手で延ばしてやりましょう。

汗をかくと流れてしまうので、汗をかきやすい関節などを中心に、汗をしっかりかいたなと思ったら1~2時間くらいでかけなおすのがいいかもしれません。日焼け止めなどのあと、虫よけスプレーは最後で良いです」

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