豪雨災害から4年 芦北町の『湧泉閣』が立ち寄り湯として再開【熊本】

4年前の2020年7月豪雨で甚大な被害を受けた温泉旅館が芦北町にあります。
創業60年以上の『湧泉閣』です。立ち寄り湯として再開させた経営者の思いに迫ります。

九州自動車道八代インターチェンジから南に車でおよそ1時間。
芦北町を流れる球磨川の支流、吉尾川沿いにその温泉地はあります。

『吉尾温泉』です。

ここで60年以上、温泉旅館として営まれてきたのが『湧泉閣』です。

代表の岩城一巳さんに付いて行くと、懐かしさを感じさせる内湯がありました。

源泉かけ流しでほのかに硫黄の匂いがします。

しかし、いまから4年前…

地区に通じる全ての道路が使えなくなり、車での往来が不可能に。事実上の孤立状態に陥っていました。
取材班はこの時、岩城さんの妻の妹が片道およそ2時間かけて歩いて様子を見に行くということでそこに同行し、地区に入りました。

【岩城一巳さん】
「道路が少しでも通れるようにいま土砂をどけているところ」
命こそ助かった岩城さん夫婦。しかし、自慢の岩風呂は泥に覆われ、無残な姿に…。

【岩城さん】
「頑張って元通りにしたいと思う。たぶん半年とか1年でも無理かもしれないですね。これだけ壊れていたらそう簡単にはいかないだろうけど、やっぱり長年暮らしたことだし、両親との思い出もいっぱいあるので、やっぱり戻れるように頑張ろうと。こういう状態のところを見ると特にそういう気に、強く思う」

岩城さんの両親が60年以上前に温泉旅館としてはじめた『湧泉閣』。

TKUには、1990年代の映像が残っています。

球磨川で取れたアユを使った料理の数々。調理していたのは一巳さんです。

特にバブル経済期は関東や関西からもアユ釣り客が訪れ、にぎわっていたといいます。

岩風呂や露天風呂は今も復活には至っていませんが、2021年秋に内湯を「立ち寄り湯」として再開。
そこには、こんな思いがありました。

【岩城さん】
「吉尾温泉がなくなる…と思った。私だけかもしれないが、来る途中に『吉尾温泉』という矢印があって、あと何キロとか標識が今もある。あれをなくしちゃいかんよね…とか。だから、できるんだったら立ち寄り湯だけでもやろうと」

吉野温泉を取り巻く環境はまだまだ厳しいものがあります。豪雨前は近くを走るJR肥薩線を利用して訪れる人もいましたが、4年たった今も復旧には至っておらず、その行方が気がかりです。それでも岩城さんは元気なうちは温泉を守り続けると決めています。
営業/水・金・土・日
午後1~8時
大人500円 小学生200円

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