神戸製鋼など3者、水耕栽培装置向け抗菌資材を開発 藻の発生10分の1に、神鋼独自のめっき技術活用

 神戸製鋼所は5日、独自の高機能抗菌めっき技術「KENIFINE(ケニファイン)」とステンレス部材を組み合わせ、農作物の水耕栽培装置向けとなる抗菌資材を開発したと発表した。水耕栽培の課題だった装置内の藻の発生面積を10分の1以下に抑制でき、農作物の生産性を高められる。共同開発しためっき専業の高秋化学(本社・新潟県燕市、社長・高橋靖之氏)が販売し、5年後の2023年度に5千万円の売り上げを目指す。

 神戸製鋼、高秋化学、大阪府立環境農林水産総合研究所の3者が共同開発した。10日に幕張メッセ(千葉市)で開幕する「第5回次世代農業EXPO」への出展を機に高秋化学が販売を始める。

 ケニファインは神戸製鋼が2001年に独自開発した高機能ニッケル系合金めっき技術。滅菌速度が速く、カビも抑制できる高い抗菌作用が特徴だ。01年から同技術のライセンスを表面処理会社に供与する形でビジネスを展開しており、高秋化学にも供与している。

 開発した新資材はステンレスにケニファインを施した防藻資材。断面形状でT字とL字型の2種類を展開。水耕装置の中でも藻が生えやすい槽とパネルの境界部に適用することで効果を発揮する。ニッケルイオンの溶出が農作物の生育に問題がないことも確かめた。防藻効果は長期にわたるほか、設置が容易になる利点もある。

 まずステンレス製を市場投入し、来年度からは樹脂製もラインナップに加える。

 水耕栽培は農作物の生産性の高さなどから世界的に注目されており、水耕栽培に関わる設備の世界市場は16年の約260億円から25年に倍以上の約650億円に拡大するという試算もある。ただ、常に水を使用するため、栽培装置のパネルや槽に藻が発生し、害虫や藻の除去に負担がかかるなどの課題があった。

 これに対し神戸製鋼は13年に大阪府環農水研と共同で水耕栽培の衛生管理手段としてケニファインが有効なことを確認。農業分野に適用した場合の抗菌性や防藻性を検証した。その後、高秋化学を交えた3者で実用化に向けた共同研究を実施。ケニファインから溶出するニッケルイオンが作物の生育に影響を与えない開発資材の配置などを考案し、実用化にこぎつけた。

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