ティグアンに追加されたディーゼル「TDI」で北海道を目指すことに!?
各メーカーがしのぎを削る激戦区のコンパクトSUV市場に、フォルクスワーゲン(VW)が渾身の力で送り出した2代目ティグアン。VWの新世代プラットフォーム「MQB」に構築されるボディはVWファミリーであることを強く感じさせるエッジの効いたディティールを持ち、Volkswagenオールイン・セーフティの考えに基づいた安全装備も満載しています。
そして今年の8月29日から新たに発売されたのがフォルクスワーゲン ティグアン「TDI 4MOTION」です。「クリーンディーゼル+4WD」であるTDI 4MOTIONは、実用性が高くアクティブな使い方に向くSUVにぴったりの組み合わせですよね。
「TDI 4MOTION」を得たことでさらに魅力的になったなあー、いいなーティグアン! って思っていたら、なんと「ティグアンTDI 4MOTIONで北の大地を走りませんか?」というオファーをオートックワン編集長T氏よりいただきました。ええ、行きます!行きますともー! 「プランも考えてー」ええ、はい、考えます、考えますともー!
鉄ちゃん3人で北海道に行くならアレするしかない!
今回の行程は「初日朝に東京を出発、3日目のお昼に千歳市に集合、新千歳空港から飛行機で帰宅」の指示。つまり出発と集合の間はどんなルートで向かっても、何をしても自由なのです。しかも今回ご一緒するメンバーの編集長T氏、Kカメラマンともに嗜好も年齢も近い鉄ちゃん。そんなオヂサン3人組で行けるとなれば、「主目的」はもう迷うことなし。そう、鉄道しかありません(笑)。
T氏とKカメラマンがクルマメディアらしからぬ場所を訪問して思い切り鉄ちゃんっぷりを存分に発揮した前回の北海道ドライブをしのぐ内容にしようじゃあーりませんか!
とはいえ、一言で鉄道と言っても乗り鉄、撮り鉄などすることはいろいろ。そこでぼくはティグアンTDI 4MOTIONを最大限に活用すべく、広大な北海道をクルマで移動できるメリットを生かした「鉄道の保存車巡り」をメインコンテンツにしようと思い立ちました。各地で保存されている車両を見に行って写真に収めるのも、ぼくの隠れたライフワークだったりします。
そこで頭の中の保存車データバンクとネットを駆使して詳細なプランニングを作成しました。初日は八戸まで移動、深夜便のフェリーで苫小牧へ。そして北海道ではあんなとここんなとこへ……おおっと!ここから先は今から書きますのでお楽しみに!
ティグアンTDI 4MOTIONが高める「旅への期待」
初日朝、VWグループジャパン本社がある品川・御殿山にぼくとKカメラマンが集合しました。編集長T氏はこの日の仕事を東京で終え、八戸港22時発のフェリーに間に合わすべく新幹線で追いかけてくることに。編集長いそがしいのね(涙)。
先発隊はティグアンを借り受け、いざ北に向かって出発です。今回3日間に渡ってお供いただくティグアンは「TDI 4MOTION Highline(ハイライン)」。装備充実の標準仕様の「Comfortline(コンフォートライン)」にさらにLEDヘッドライト/テールランプ、レーンキープアシストシステム「Lane Assist」、シルバールーフレールなどを備えたモデルです。カラーはKカメラマンも「これは置いたら映える!」とガッツポーズの「ルビーレッドメタリック」。深みある濃いめの赤が初秋の空を美しく写しこみます。座り心地に優れるレザーシートと運転席パワーシートなどが含まれるレザーパッケージも、遠い北への長い行程を快適にすることを約束してくれるかのよう。
それにしてもSUVって、乗り込む時ワクワクしますよね。楽しい旅になるヨカンで溢れています。遠くに行く時はなおさらです!
いざ八戸へ。でもそのまま行くだけじゃもったいない
東京を出発したティグアンTDI 4MOTIONは順調に東北道を北上していきます。150ps(110kW)と340nM(34.7kgm)のトルクを誇る最新の2リッター直4 DOHC 16バルブターボディーゼルエンジンと7速DSGを組み合わせたパワートレーンは、車重1730kgに大人2名とスーツケース、機材を乗せた状態のティグアンTDI 4MOTIONを軽快に走らせます。低速域から溢れる3.5リッタークラスのトルクは溢れんばかりで、高速道路で追い抜くときなどの加速は素晴らしいの一言。TDIエンジンは伊達じゃない! そして「ディーゼルって振動とか音すごいよね」「パワーなさそう」という印象も完全に過去のハナシ。走行中の音も全く気にならないのです。もちろん停車中や低速での走行でも音や振動は極めて少なく、言われなかったらディーゼルと気がつかないレベルではないでしょうか。
全速度域で有効なACC(アダプティブクルーズコントロール)をオンにして、ステアリングホイール左側のボタンで速度と車間距離をセットすれば、あとの速度調整はティグアンにお任せのラクラクドライブ。高速道路だけでなく先行車が完全に停止するほどの速度にも対応しますので、渋滞の多い一般道でも使用できるのが嬉しいところです。
※メーカーでは高速道路での使用を推奨
ぼくが用意した80年代ソングのプレイリストやオフコース、小田和正を流した車内はオヂサン2人のカラオケボックス状態で大盛り上がり。直進安定性も抜群で乗り心地も素晴らしく、ティグアンはあっという間にノンストップで福島県に突入しました。
安達太良サービスエリアでちょっと遅いお昼を食べた後もひたすら八戸を目指します。
でも、そのまま行くだけじゃもったいない! 途中、高速道路のインターチェンジ付近に保存車両はないものか? ということになり、ぼくの脳内保存車データベースもカタカタと動き出します(アナログだけど)。
合致したのは仙台エリア。郊外の利府町に、とある電気機関車が保存されているのです。
交流電化や新幹線の礎となった電気機関車を見る
目的地の利府町森郷公園に着いたのは夕方。利府駅そばの住宅街にぽつんと存在するこの小さな公園に置いてあるのは「ED91 11」です。保存車は保管の関係上柵の中に置いてあったり公園の奥深くにあることが多いのですが、この公園では「ざっくり」と目の前にあり、しかも道路から近いこともあってインパクト強めでした。10月の日暮れは思った以上に早く、優しい夕日が古豪の姿をオレンジに照らします。デッキ付きの古典的なスタイルにオヂサン2人は大興奮です。
ED91は旧国鉄が1955(昭和30)年に試作した交流電気機関車で登場当初はED45を名乗り、試験的に交流電化された仙山線の一部区間で運用を行っていました。
現在、JRの路線で東北や北海道、九州など、そして新幹線全線の電化区間では交流電化が主になっています。これは大都市圏などで使用されている直流電化に比べると交流では地上設備のコストが低くなるなどリーズナブルに電化が可能だったためです。
1950年代ではまだ国鉄路線の多くが非電化だったため、コストが安い交流電化を進めようとしていました。しかし交流電化は技術的に未知の領域だったのです。技術が進んでいたフランスからの機関車輸入も考えられましたが、諸事情から国内の電機メーカーが試作をすることになりました。日立製作所は交流モーターを回す直接式を採用したED44(のちのED90)を開発。一方三菱電機・新三菱重工業は交流電気を整流器で直流に変換し、直流電車に用いられる直流モーターを駆動させる整流器式を選びました。それがED45になります。
双方ともに仙山線で試験運用が行われた結果ED45に軍配が上がり、改良が施された11号機(東芝)、21号機(日立製作所)を1956(昭和31)年に追加製造して試験を繰り返しました。そして日本の交流電化に向けての技術が固まっていったのです。つまり、この電気機関車は日本を代表する新幹線技術の基礎を作った車両と言えます。そんな貴重な機関車がポンっ! と置かれているのですから、ちょっと奇妙な光景ではあります(笑)。
なおED44、45ともに1961(昭和36)年にそれぞれ試作形式のED90/ED91に改められました。ちなみに旧国鉄/JRでは、形式や区分番台の数字で90番台、900番台の場合試作車を示すことが多いです(201系900番台、EF200形900番台、キハ90系、キハ391系など)。
なんと細やかな配光操作!「ダイナミックライトアシスト」にびっくり
あとは八戸港を目指しましょう。22時出航なので遅くとも1時間前には到着したい。T編集長も20時12分八戸駅着の「はやぶさ33号」で追いかけてきます。夜の帳(とばり)の中を進むティグアンの車内はこれまたぼくが用意した寺尾聰、テレサ・テン、高山巌、吉幾三などが流れて「歌うヘッドライト」か「走れ歌謡曲」状態。東北道を北上する夜に聴くと沁みますなあ……。オヂサン2人、涙もろくっていけません。歌を聴いただけで涙が出そうです。
東北の凄さは距離感を掴みにくいことです。結構来たなー、って思わせる仙台までは東京から約400km。でも八戸はここからさらに北に300km先!
辺りはすっかり真っ暗ですが、東北道は多くの区間に道路を照らす照明がありません。そんな時はハイビーム主体で走行するとラクなものの、前方のクルマや対向車にハイビームは迷惑になります。そこで最近のクルマの多くにはハイロー切り替えの手間を煩わせるオートハイビーム機能が備わっています。ティグアンTDI 4MOTION Highlineのそれはさらに進んでいてびっくりしました。
オートハイビームの多くは単に上下のハイローを切り替えるだけですが、ティグアンTDI 4MOTION Highlineが備える「ダイナミックライトアシスト」はフロントカメラで先行車と対向車の位置や距離を割り出して、ヘッドライトの照射エリアを細かく調整してくれるのです。
スゴイのが「ハイビームのままでも幻惑しないように配光を変えることができる」こと。運転しながらヘッドライトの動きを見ていると、照射する位置が上下左右ナナメへと細かくコントロールされ続けているのがわかります。前方、対向車に対して「絶妙に照射しない」エリアを探しているんですね。夜のロングツーリングではヘッドライトが明るいとラクでも、無闇に明るすぎるライトは他のドライバーへの迷惑になることも。「ダイナミックライトアシスト」ならLEDライトが明るい上に他車にも優しいのですから、その威力は絶大と言えます。
フェリーにクルマと乗り込むワクワク
ティグアンTDI 4MOTIONはついに八戸駅に到着! 時間はT編集長到着の数分前でした。うん、予定通り!?
トリップメーターは695Kmを指しています。ぼくは往路の7割くらいを運転しましたが、誇張ではなくて全然疲れ知らず。シートと乗り心地の良さに加え、豊富なトルクによる走りと高い直進安定性でストレスがないこと、SUVゆえの見晴らしの良さなどがロングツーリングをラクにしてくれます。
「クルマの良さ」を評価するのは様々な視点がありますが、「疲れない」というのも重要な要素だと思います。でも疲れないクルマを実現するのは実はとても大変なこと。パワーがあってもフラフラ走るようではダメだし、シートや乗り心地が良いのは必須とも言える条件です。つまり、「疲れないクルマ」は総合力が高い証明でもあるのです。ティグアンTDI 4MOTIONで一気に700kmを走り抜いてその思いを改めて強くしました。
ちなみにここまで特に燃費は意識せず、踏む時は踏むという運転でもオンボードの燃費計で16.6km/Lを記録しました。燃料タンクは63リットル。さらに残り270kmも走れるとのことなので、給油は北海道でしましょう。
「シルバーフェリー」として親しまれる川崎近海汽船が運航する苫小牧行きフェリー「シルバーエイト」が出迎える八戸港に着いたのは20時45分。客船ターミナルの渋くて昭和感たっぷりのレストランで夕食を済ませ、いざフェリーに乗り込むことに。
シルバーエイトは総トン数約9500t、全長142mの大きな船で、大型トラック68台、乗用車を30台、定員600名を一度に航送できます。
それにしても夜のフェリー埠頭の旅情、フェリーに乗り込む時のワクワク感ってなんて素敵なんでしょう。旅をしている! 旅に出るのだ! という醍醐味たっぷりです。クルマと一緒に乗っている、という嬉しさもありますよね。
船旅を楽しもう……と思ったら爆睡。そして苫小牧へ
シルバーエイトは定刻に八戸港を出航。翌朝6時に苫小牧港に着くまで8時間の船旅です。オヂサン3人は明日のプラン再確認を称してフリースペースで軽く酒盛りをした後、明日も朝早いので就寝することに。
ぼくはもう少し船旅を楽しもう、と思ってデッキに出たりフリースペースでまったりしていたのですが結局部屋に戻った途端に記憶がなくなりました(笑)。気がついたらもう苫小牧です。いやあーよく眠れました。八戸と苫小牧の航路は約240km。移動しながら6~7時間眠れるっていうのは効率がいいですね。
さあそしていよいよ北海道に上陸……!この続きは後編でお送りします。これまた濃厚な1日になりました。
どうぞお楽しみに!
[レポート:遠藤イヅル/Photo:小林 岳夫・和田 清志]
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