伝統工芸維持にも一役 和紙の原料の美容液

 「こんなのあるんだ!大賞」中国・四国ブロックで1位となった「結の香ホワイトセラム」は、岡山県真庭市で古くから栽培されているミツマタのエキスを配合した美容液だ。ミツマタは紙幣や和紙の原料となるジンチョウゲ科の植物で、美容液を開発したエイチケイ商会のある真庭市では、今もミツマタを使った手すき和紙が伝統工芸として受け継がれている。しかし、近年は農家や職人の高齢化、後継者不足などの影響で、ミツマタ生産は落ち込む一方。和紙の工房も徐々に少なくなっているという。

美容液「結の香ホワイトセラム」

  同社の内藤靖史会長が「地元の伝統工芸を維持したい」との思いで開発したのがこの美容液。和紙に使う繊維を取り出すために煮出した後のエキスを使っている。1本30ミリリットルで2カ月ほど使える伸びの良さ、植物由来のほのかな香りが特徴だ。

  価格は8640円(税込み)で、記者愛用の美容液(798円)の10倍以上のお値段。これで効果がなかったら許せない。化粧品オタクの妹にも協力を仰ぎ、姉妹で試した。

  とにかく保湿力が半端ない。さらっとしたテクスチャーなのに、しっとりした状態が続く。1週間も使うと、肌が柔らかくなったように感じた。乾燥肌の妹の感動はさらに激しかった。「つけた直後からお肌がぷるぷる! 膜が張っているみたい!」。翌朝、自分の肌の弾力に驚いたという。それにしても、こんな保湿力を持つ美容液なのに、開発元の「エイチケイ商会」って、化粧品会社として聞いたことがないけど…。

  それもそのはず、同社は米穀や燃料の卸小売りをしている会社だ。化粧品は異分野で、内藤会長自身も「全くの素人」だった。内藤会長は6年前、商品の新しいパッケージを作るために訪れた地元の手すき和紙工房で、職人の手がきれいなことに気がついた。寒さの厳しい環境下でも、職人の作業は素手だ。それなのに、なぜ? 原料のミツマタに着目し、岡山理科大に調査を依頼。ミツマタエキスにメラニン色素の生成を抑える作用があることが判明した。「紙以外の分野でミツマタが使えるようになれば、再び栽培が盛んになるかもしれない」。内藤会長自ら加工業者や農家に足を運び、開発に向けて駆け回った。

 

和紙をすく風景

 パッケージの箱にもミツマタの手すき和紙を使った。染料のにじみを利用して図柄を描いているので、どの箱も一点ものだ。今年10月には新たにミツマタの石けんを発売。今後もミツマタを使ったスキンケア商品を順次開発する方針だ。内藤会長は「知名度を上げ、地域活性化につなげたい」と話している。

 (47NEWS 関かおり)

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