議員の実情 2019 統一地方選アンケート(3)<女性議員の活躍> 意識や環境の改善なるか

 男性同僚議員から返ってきたのは気遣いではなく、批判の言葉だった。

 「謝るべきだ」「罰を与える」

 12年前。シングルマザーの西彼時津町議、浜辺七美枝(47)は宮崎県への2泊3日の委員会視察を欠席した。当時7歳の長女が高熱を出し、預けられる人がいなかった。委員長の許可を得たが、同僚議員の反応に暗い気持ちになった。

 「議会内に『子どものことで委員会を休むのは論外』という雰囲気が流れていた。今も女性が立候補しやすい環境ではないと思う」。浜辺は言う。

 議会活動と家庭の両立-。多くの女性が政治参画する際に感じる障壁の一つだ。2017年、熊本市議の女性が生後7カ月の長男を抱いて議場入りし論争が起きたが、その後、大きなうねりになったわけではない。男性中心の議会構成となっている県内議会でも、議論はほとんど起きなかった。だが、多くの女性議員がこの論争の根底にある「両立」に悩み、葛藤し、ときに何かをあきらめていることは議員アンケートから垣間見えてくる。

 「所属する議会は女性が議員として活躍しやすい環境か」と尋ねたところ、回答した女性議員29人のうち「どちらかといえば」を含めた否定派は13人(45%)、肯定派は15人。「その他・分からない」が1人だった。対して男性議員は否定派が24%にとどまり、意識に温度差がある。男女問わず、否定派の意見はほぼ「女性を議員として受け入れる空気でない」(平戸市議)、「子育て中の女性へのサポートが少ない」(長崎市議)に集約される。

 多様な民意反映に女性の政治参画は欠かせない。育児、介護など主に女性が担ってきた分野の環境をより良く変えていくには、予算案や条例案などを審議する議会も“男性議会”では限界がある。東彼波佐見町議の横山聖代(38)は「状況を変えるにも議会規則が両立をサポートするようになっていない」と指摘する。

 現状を変えようとする動きも県内で出てきてはいる。大村市議会と北松小値賀町議会は昨年12月、議会会議規則を改正。議員が会議などを欠席できる理由に「育児」「介護」「看護」を追加し、議員の一時休暇を取得しやすくした。

 茨城県の先進市議会を視察し「女性も立候補しやすくするには改正が必要」と感じ、提案したという大村市議の田中秀和(61)は「これらを“当たり前のこと”と考え、議会も変わっていかなければ」と話す。

 前回の統一地方選後、長崎県内女性議員は4人増えたが、定数に占める割合は7・2%と1割にも満たない。長崎大多文化社会学部の近江美保教授(国際人権法)は「託児所を整備するなど、子育て中であっても立候補できる環境を整えることが大切」と女性進出を阻む壁を取り除く必要性を説く。
 =文中敬称略=

 ■調査方法■ 長崎新聞社が長崎県内全ての地方議会(長崎県議会、13市議会、8町議会)の全議員435人(当時)を対象に実施した。昨年10月末からアンケート用紙(回答は選択肢と自由記述)を配布し、同12月中旬までに回収。403人から回答(回収率92.6%)を得た。

女性議員が活躍しやすい環境か
女性議員が活躍しやすい環境か、男女で意識差が浮き彫りになった=長崎県議会棟

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